読売書法会系が日展で突出した存在に
2013年の書道界のスキャンダル後、「書道美術新聞」(美術新聞社が発行)は、「改組 新 第1回日展」(2014年)と「改組 新 第2回日展」(2015年)の会派別入選者数を掲載しました。
それによると、有力会派の入選者数は、2回ともほぼ同じという結果になりました。日展第5科(書)の入選者の85%は、読売書法会を構成する日本書芸院と謙慎書道会の2つの書道団体で占められています。読売書法会系が日展では突出した存在になっています。
この2団体が日展の「書」を支配していることは、両団体や日展関係者の間では常識だとされ、「日展に入選したいのなら、入門する書道団体を選びなさい」と囁かれており、書道教室の中には「よみうり教室」といった看板を掲げた教室も珍しくありません。
第5科(書)の審査員数は毎回17人(規定では17人以下。さらに外部審査員が2人)で、毎年、入れ代わりますが、審査員の多くを日本書芸院と謙慎書道会の書家が確保しています。
2011年から2023年までの計13回の会派別の分布を調べると、13回の合計数221人(延べ人数。17人×13回)のうち、日本書芸院が121人(54.8%)、謙慎書道会が63人(28.5%)、その他の書道団体等が37人(16.7%)でした。
平均すると、毎年、日本書芸院が9人前後、謙慎書道会が5人前後、その他団体等が3人前後になっています。
実態を知っているのに報じない新聞社
日展の審査員数を、日本書芸院と謙慎書道会が一定数で確保していることは、日展と両団体による談合的な体制があるのではないかと、疑問を持つ要因になります。審査員の独占と入選者の独占は表裏一体と言えるからです。
書道美術新聞は2016年以降、入選者の所属団体別の調査結果を掲載しなくなり、マスコミも、書道界の審査体制の実態や金権体質に斬り込まなくなりました。日本を代表する大手新聞社は書道界と深い関係を持っているため、口をつぐみ、書道界も実態を隠し続けてきたとしか思えません。
深刻な問題が存在するのに、マスコミが報道しないケースはこれまでもありました。旧統一教会の被害者問題や、ジャニー喜多川氏の性加害問題などです。
知っているのに沈黙する。報道すれば自社が不利益を被るかも知れない。本来、報道すべき問題に口を閉ざし、長期間、ベールに包まれてきた点は、書道界の問題にも共通しています。