上層階級への切符は特選受賞者になること

書道団体の「偏り」が見られるのは日展の入選者や審査員だけではありません。

日展への入選を繰り返している書家の中から、特選に選ばれます。入選の回数、2回の特選の受賞などを経て、会友、準会員になれます。日展には会友、準会員、会員、監事、理事、理事長、顧問などのヒエラルキーができています。

会員、顧問、準会員、前回の特選受賞者には、審査を受けずに、日展に作品を出品できる特典があります。2023年の日展で、入選点数(1112点)以上の約3000点の作品が展覧会で展示されているのは、日展の大御所や会員、準会員の作品が展示されているからです。

芸術の世界のエスタブリッシュメント(上層階級)に上り詰めるには、日展会員であることが重要です。日展会員であることは、日本芸術院会員、文化功労者、文化勲章などの栄誉に浴する近道であるからです。

書の部門で特選に選ばれるのは毎回10人(規定では10人以下)。入選者が1000人前後なのに比べると、とてつもなく狭き門だと分かります。

特選も読売書法会系が8割以上を占めている

2004~2013年の10年間で、読売書法会系の特選受賞者は100人(10人×10回)中85人(のべ人数)でした。

2014年から2023年までの10年間の読売書法会系の特選受賞者は81人。2016年は5人でしたので、ほぼ同じペースで特選を独占しています。入選者も、特選受賞者も85%という数字が一致しているところが不思議です。

審査方法の大改革があったはずですが、どうなっているのでしょうか。

日本書芸院もしくは謙慎書道会に所属しない書家は、日展では、なかなか入選できませんし、特選に選ばれる確率が極めて低いことはデータを見れば理解できます。

日展の第5科(書)の理事、監事、顧問の計9人のうち、8人は日本書芸院と謙慎書道会の書家です。日展の第5科(書)では毎年1万点前後の応募があり、入選するのは1000点前後ですから、競争率は10倍と高く、厳正な審査が行われている印象があります。

しかし、日本書芸院と謙慎書道会の書家には、「日展で入選するには毎回、自分の社中(同門生の集まり)から5~10点の出展をすること」という暗黙のルールがあり、親戚、知人の名前を借りて、わざと下手に書いた書を出品するなど、数の水増しをして、応募点数が実態よりも多く表示されているのではないかという指摘もあります。