長老が強い権限と影響力を持つ特殊な世界

報告書はさらに以下のように書道界の構造と特色を分析しています。

師弟関係は強固であり、生涯継続する。また師匠は門下に対し強い指導力を持ち、展覧会へ出品するか否かも師匠が決める。

このような師弟関係を基礎として、「社中」が組織され、社中を主宰する師匠が集まって上位の社中を結成する。これらが重層的に積みあがって、いわゆる「会派」が結成される。これらの会派を統括する「書道団体」も存在する。書道団体としては、東京の謙慎書道会、西日本を中心とする日本書芸院が二大勢力である。(中略)

会派の長期的発展のためには、特選受賞者を多く誕生させ、審査員を経験させて日展会員、役員にし、会派の入選者を多くする必要がある。そのための第一歩が特選の受賞である。特選受賞2回で出品委嘱者(筆者注。審査を経ないで、日展の展覧会に出品できる者)となり、次に審査員経験で日展会員となり、順次階段を昇っていく。そのエスカレーターの重要なステップに特選が位置しているため、特選を誰に与えるか、どこの会派がとるかは極めて重要な事項である。この点に関し、日展上層部が決めているというのが日展会員の共通した理解であった。(中略)

現在の書の審査に関連して、金銭のやりとりがなされるという風聞に関しては、本委員会における短期間の調査においても、内部情報を含めいくつも見聞することができた。

書の世界では、長老が審査員の選出などで、強い権限と影響力を持ち続けており、カネがものを言う特殊な社会というわけです。

賄賂を渡すビジネスマン
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書道団体を支えている大手新聞社3社

日展は審査体制の改革を行い、2014年、「改組 新 第1回日展」として出直しました。そのため2023年の日展が、第10回となっているのです。

書道団体(会派)別の入選者の割り当てなど、不正審査が一掃されたかというと、疑いの眼差しを向けざるを得ません。

書道界(書壇)には有力な書道団体が美術系と教育系、合わせて40ほどありますが、美術系では、大手新聞社が独自に展覧会を開き、書道団体を支援してきました。

毎日新聞社は毎日書道会、産経新聞社は産経国際書会、読売新聞社の関連団体である読売書法会は日本書芸院と謙慎書道会という団体を支えています。

朝日新聞社は書道団体を形成していませんが、「現代書道二十人展」を主催しています。「書壇の成立と展覧会活動」については、文化庁が2021年3月に発行した以下のレポートの6ページに記載されています。

令和2年度 生活文化調査研究事業(書道)」(文化庁地域文化創生本部事務局)