県幹部が「部分開業」を県の公式見解にしてしまう

県議会翌日の13日の定例会見で、川勝知事の「社長にしかできない」発言に対して、肝心の丹羽社長が「部分開業」を否定しているとただされると、相変わらずのごまかしで、記者たちを煙に巻いてしまった。

翌日14日の県議会危機管理くらし環境委員会で、リニア担当幹部職員の渡邉光喜参事が「県庁内で議論したことはないが、知事が議会で答弁したので『県の公式見解』となる」と発言してしまう。

同じ14日に、JR東海が静岡工区の未着工を理由に、開業時期を「2027年“以降”」に変更すると発表すると、県は「2037年の全線開通を一刻も早く実現するために、できるところから開通していくべき」とする知事コメントを15日に出した。

つまり、知事コメントにある「できるところから開通していくべき」は川勝知事の「部分開業」論であり、県の「公式見解」として正式ルートを通じて広報された。

静岡県全体の責任が問われる異例の事態

この「部分開業」論を皮切りに、新たな開業時期などデタラメ発言が次々とあふれ出てきた。

筆者撮影
「部分開業」論を記者会見で唱えた川勝知事(静岡県庁)

ことし1月1日付新聞各紙の新春インタビュー記事に続いて、1月4日の新年会見などで、川勝知事は「(リニア開業は)2027年のくびき(縛り)がなくなった。2037年がデッドライン(最終期限)」だから、「南アルプスの問題は2037年までに解決すればいい」と発言した。

すなわち、知事任期中(2025年7月まで)はリニア問題の解決はなく、静岡工区着工の許可を棚上げすると宣言したのである。

つまり、「静岡県とは関係のない区間で、できるところから開通していくべき」の「部分開業」をJR東海は目指すべきだと、川勝知事は暗に主張したのだ。

当初からJR東海は「部分開業」を否定している。また、2037年全線開通も目標にしているが、東京・品川―名古屋間の2027年開業が遅れれば、当然、大阪までの全線開通も2037年には間に合わない。

何よりも、「部分開業」が「静岡県の公式見解」となれば、政治家である川勝知事の「ごまかし」や「嘘」では済まされなくなってしまう。

静岡県全体の責任が問われることになるからだ。