なぜ選挙にカネがかかるのか
自民党の派閥は、中選挙区制が生み出したものである。
中選挙区とは、一部の例外を除いて、定数が3~5である。当時の自民党は強かったので、一つの選挙区から複数の当選者が出る。5人区では5人とも自民党ということがありうる。そうなると、野党候補との戦いよりも同じ自民党の候補との競争のほうが熾烈になる。
かつて「三角大福中」と言われた三木武夫、田中角栄、大平正芳、福田赳夫、中曽根康弘が率いる5大派閥の時代があった。田中派と福田派の議員がいる選挙区で、新人が出馬しようとすると、それ以外の三木、大平、中曽根の派閥から立候補するしかなくなる。こうして、定数5と派閥数5が一致する。
同じ自民党から複数の候補が戦うので、政策の競争ではなく、ばらまくお金の競争となる。この「カネのかかりすぎる選挙」が問題となり、小選挙区制に移行したのである。
衆議院が小選挙区比例代表並立制を導入してからは、派閥には中選挙区時代のような意味はなくなった。小選挙区では1人しか公認候補を出さず、公認権を持つ総裁が誰を公認するかを決める。そこで首相官邸の力が強くなった。
岸田氏が内閣総理大臣だということ自体、最大派閥の長でなくても首相になれることを意味する。
大衆に受ければよい、そうすれば支持率も回復する
1月25日、自民党は、政治刷新本部で、「中間とりまとめ」を決定した。
政策集団(派閥)については、解散ではなく、以下のような方針が示されている。
派閥を真の政策集団にするために、カネと人事から完全に決別する。具体的には政治資金パーティーの禁止、所属議員への手当支給を廃止、閣僚人事で推薦や働きかけの禁止、政治資金規正法違反の場合は解散か活動休止させる、政治資金収支報告書の外部監査の義務づけ、などである。
つまり、中選挙区制下で果たしていた派閥の機能を停止させるということだが、そこまでするなら、派閥解散を決めたほうがよい。
ただ、岸田首相が唐突に岸田派の解散を宣言したことには違和感を感じる。
大衆に受ければよい、そうすれば支持率も回復すると踏んだのであろうが、まさに衆愚のポピュリズムそのものである。