同じ土俵で勝負しないことで生き残る

こうした「あえて目立たない」場所に陣取る姿勢は、まさに大手がしのぎを削る中で間隙かんげきを突く戦略だった。

大手飲料メーカーに真っ向勝負を仕掛けると、資金面や流通面でとてもかなわない。そこであえて「同じ土俵で勝負しない」ことで、同じ飲料業界でも共存できる。

一方で、「王道を全く外れない」というわけでもない。事実、「ZAO SODA」はプレーンのほかに、レモンやライムといったフレーバーを展開したり、季節限定でマスカット味などを販売したこともある。

写真提供=ライフドリンクカンパニー
ZAO SODAのプレーン、レモン
写真提供=ライフドリンクカンパニー
ZAO SODAのライム、ピンクグレープフルーツ

「これは脱付加価値をどの範囲まで捉えるかだと思います。われわれはレモンやライムをスタンダードな味と捉えています。消費者アンケートでも、レモンやライムは『ウイスキーのなどの割り材にマッチする』という声が少なからず聞かれます。他にも、日々変化する『スタンダードの中心』を見極めるために、期間限定のフレーバーを発売することもあります」(橋本さん)

ただ、「特徴がない」だけでは消費者は付いてこない。ましてや、無名の会社の商品ともなると購入に一定のハードルが生まれるだろう。そこで、LDCが「譲れない」としているのが、徹底したコストカットに基づく価格の安さだ。

ペットボトルも原料から自作しコストカット

「ZAO SODA」の楽天での価格は、24本入り送料込みで1429円(2月8日現在)。1本あたり約59.5円だ。クーポンやタイムセールではさらに安くなる。

同社ではコストカットのために「ペットボトルの自作」を行っている。

写真提供=ライフドリンクカンパニー
写真提供=ライフドリンクカンパニー
写真提供=ライフドリンクカンパニー

「他社ではペットボトルを中間原料であるプリフォームから作る事が多いですが、私たちは原料となるレジンチップを輸入して100%自社で生産しています。大手飲料メーカーさんでも自社で原料からペットボトルを作るところはありますが、ペットボトルの形状が商品によって異なるため自社生産がむしろ非効率になってしまい、一部は外注するという事もあるようです。一方、規模の小さい飲料メーカーさんだと高価なペットボトル生産設備を保有することができず、コスト削減を実現できません」

LDCでは、ペットボトルの形状を1種類に限定。さらに、容量も500ミリリットルと2リットルの2つに絞り、キャップもすべて統一することで、ロスをなくし、費用を抑えている。こうした垂直生産による合理化は、新商品の開発に追われる他社には難しい戦略といえる。

「地方単位で見ると、われわれと同じようなスタイルでやっている企業も中にはありますが、全国規模で展開する飲料メーカーは他にはありません。そういう意味では、唯一無二のポジションであると思っています」