子どもを子ども扱いせずに話しかける大切さ
それでは、どのようなトレーニングをすれば、わが子はこの手の言語知識問題を得点源にできるのだろうか。もちろん、一朝一夕に成し遂げられることではない。子どもの語彙の多寡には読書量はまちがいなく関係しているのだろうし、そして、親のわが子への接し方が鍵を握ると考えている。
幼児を例にとると分かりやすいが、彼ら彼女らは「誰かに教え込まれる」ことでことばを獲得するのだろうか。そうではない。自分の周囲に飛び交う「なんだかよく分からない音」と、「その音が指示する対象物」を結びつけることで、はじめてそのことばを習得するのである。すさまじい量の推定の連続に違いない。
これを踏まえると、小学生を「語彙モンスター」に育て上げる秘訣は、親が、周囲の大人たちが「なんだかよく分からない音」、すなわち「大人表現」をシャワーのように浴びせ、それらが指示することを自然と理解できるよう導くことだ。
これはなかなか難しいのであるが、子どもを子ども扱いせず、ひとりの「大人」のように考え、遠慮せずに普段使用していることばを投げかける意識が大切だ。ニュースを見たりしながら雑談をするときなどは、この試みが講じやすいのではないだろうか。
拙著『わが子に「ヤバい」と言わせない 親の語彙力』(KADOKAWA)は、近年の中学入試で出題された「言語知識問題」を数多く盛り込み、まずは大人が学び、それをわが子に「伝承」してほしいという思いで書き上げた。本書を一読すれば分かると思うが、大人であっても苦戦するレベルの問題揃いである。中学入試の言語知識問題は、難しいが、面白いし、深い。親子でこれらの問題を楽しみ、「これってお母さん、お父さんだって知らないことばだよ」……そんな会話をすることで、わが子の語彙の基盤は強化されていくはずだ。
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