マンション共用部への置き配規制も回避

渡辺弘美『テックラッシュ戦記 Amazonロビイストが日本を動かした方法』(中央公論新社)

この置き配検討会では、途中時間があいた時期があったが、最終的には2020年3月に「置き配の現状と実施に向けたポイント」という文書が公表され、置き配実施上の法的課題と対応策について整理された。

その結果として、最も気になっていたマンション共用部分での実施に関しては、「これまでの実態等を踏まえると、明確に使用細則等において禁止されていなければ直ちにその実施が妨げられるものではない」「消防法との関連では、(略)消防法第8条の2の4(略)を踏まえ、適切に管理する必要がある。なお、共用部分に、宅配物・生協配送・牛乳配達など、避難の支障とならない少量または小規模の私物を暫定的に置く場合は、長期放置や大量・乱雑な放置等を除き、社会通念上、法的問題にはならないと考えられる」と記載された。これでマンション共用部における置き配が直ちに規制されることは回避された訳である。

政府経由で広報することにも成功した

また、この文書には予定どおり各社の取組事例も引用され、アマゾンの置き配に関して、玄関だけでなく、宅配ボックス、ガスメーターボックス、自転車のかご、車庫、建物内受付/管理人の中から希望の置き場所が指定できること、専用のアプリを利用して、指定された配達場所に配達が完了した様子の写真を撮影し、お客様に送信し知らせることができること、置き配のリスク対応として、商品が届いていない場合などには、お客様から状況を伺い、商品の再送や返金に対応していることが先進事例として紹介された。

一銭も使わずに、政府をうまく味方につけることで、置き配の社会的受容性を高めることができただけでなく、アマゾンの置き配の取組について政府経由で広報することにも成功した訳である。

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