自社より10倍も大きい会社を買った理由

自分の力ではなく他人の力を借りて事業を大きくしていこう――。30歳でこう視点を切り替えたことが、僕にとって大きな転機になりました。自力で事業を伸ばすべきだという思い込みを捨てたことで、その後M&Aも実現させることができました。

撮影=プレジデントオンライン編集部

それまで、M&Aは大企業や上場企業だけができるものだと思い込んでいたのですが、考えてみれば小さな会社だからって別の会社を買っちゃいけない理由はないですよね。それで、もし自社より10倍ぐらい規模の大きい会社を買わせていただけたら一気に業績を伸ばせるな、そのほうがいいじゃんと思ったわけです。

結果的にあるオーナーの方から会社を譲っていただくことができ、それが会社が急成長するきっかけのひとつになりました。これも、M&Aは大企業がするものだという固定観念を取っ払ったからこそ実現できたと考えています。

商売の基本は人のふんどしを借りること

思い起こせば、他力で事業を大きくするという発想は、小学生のころにラーメン屋で読んだ漫画『SHOGUN』の影響かもしれません。金も力もない主人公が商才を武器にビジネス界のトップを目指す物語で、その中に他店の人気に便乗する形で自分の店の売り上げを伸ばしたエピソードがありました。たった1回読んだだけなのですが、この話はなぜかずっと印象に残っています。

日本では他人の力で成功した人を、ラクして儲けるなんてと非難する傾向が強いですが、僕は大いにありだと思っています。実は父もそうで、以前「商売の基本は人のふんどしを借りることだ」というアドバイスをくれたことがあります。

父も小さな会社を経営していますから、実際の経験から出た言葉だろうと思います。経営に関して教えを受けたことはほとんどないのですが、数少ないアドバイスのひとつがそれだったので、不思議なつながりを感じました。そんなこともあって、つい最近『SHOGUN』を読み返したくなり、全巻購入したところです。