正攻法ではなく“変化球の方法”を

マス層を取り込んで大成功した例に『東京卍リベンジャーズ』、通称『東リベ』があります。この作品の特徴は、漫画やアニメのコアなファンにとっては既視感のある「ヤンキー漫画」という題材に、「タイムスリップ」という要素を組み合わせたこと。これによって、コアなファン層はもちろん普段は漫画やアニメにあまり触れないライト層にとっても面白い大衆向けの娯楽作品となり、爆発的な人気を得ました。

キャラアート会長 保手濱彰人さん
撮影=プレジデントオンライン編集部

このように、新たなヒットを狙うなら「コア顧客を見るべし」という思い込みは捨てるべきです。ビジネスはマス層を相手にしたほうが大きく成功しやすい。マス層を相手にできるように、既存のものを既存の視点をずらしたうえで組み合わせてライトユーザー層に届けていくことが成功のポイントだと思っています。

まだ世にない新しいコンセプトを思いついたら、顧客の意見はもちろん上司の意見も聞かずに、「とりあえずつくってしまえ」ぐらいの気持ちで取り組んでほしいですね。ちょっとした成功や評価を狙うなら正攻法でもいいでしょうが、大成功を狙うなら正論や王道から外れた方法をとるべきです。

こうしたやり方はズルいとか、不誠実だとか思う人もいるでしょう。でも、そもそもレバレッジ効果を得る方法というのは耳障りの悪いものであることが多い。ビジネスでは正論や王道ではない方法はあまり公にはされませんが、商品力において他と差をつけるうえでは、あえてそれを求め実行する姿勢も必要だと思います。

借金3億円のどん底から見出した成功のカギ

とはいえ僕も、20代のころはきちんとビジネスを学んでコツコツやるのが正しいという思い込みがあり、正論や王道をもとに事業に取り組んでいました。結果は冒頭の通りで、20代の終わりには3億円もの借金を抱えてまさに絶望のどん底にいました。

この10年間の失敗の歴史を経て、30歳のときにようやく「成功するにはこれまでの思い込みから脱却しなければ」と思えるようになりました。そこで、自分はあまり仕事に向いていないし好きでもない、だから仕事はその道のプロにお願いして自分はビジョンを立てる人になろうと思い立ったのです。すると周りに自然と仕事ができる人が増え、それに連れて会社も勝手に大きくなっていきました。