最初の5年間、健康管理が行われたグループは、4カ月ごとに健康診断を行った上で薬剤が処方され、アルコールや砂糖、塩分の管理など食生活に関する指導も行われました。何もしないグループでは、健康調査票への定期的な記入以外は、放置されたのです。
その後、6年目から12年目については、健康管理は自己管理にしてもらい、15年後に両者の健康状態がどうなっているのかを検査しました。多くの方は、最初に健康管理されたグループのほうが、十五年目の健康状態は良いはずだ……と考えるのではないでしょうか。
しかし、結果はその予想を大きく覆すもので、がんをはじめとする各種の病気の死亡率や自殺者数、心血管性系の病気の疾病率や死亡率などの数値は、きちんと健康管理が行われていたグループのほうが高かったのです。
この結果を見て、「過度な医療の介入は健康を損なうのではないか」と感じる人は少なくないでしょう。
欧米で集団検診が廃止になったワケ
ただ、私が驚いたのは、このフィンランドの研究が発表された後の日本の医者たちの反応でした。本来ならば、多くの医療関係者たちがこの衝撃的な結果に対して真剣に向き合うべきだと思いますが、日本の多くの医者たちは「調査の仕方が間違っているのでは」といって検証もせず、バカにするだけ。
医者たちが科学者である以上、調査で自分が納得のできない結果が出たのならば、きちんとその原因を精査すべきではないでしょうか? 調査の仕方が悪いというのであれば、それを修正した上で何がおかしかったのかを具体的に挙げるか、自分たちが同じ実験を行って、「このデータは間違っている」と指摘するべきです。
科学的なデータには科学的な反論が必要です。ですが、日本の医者の大部分は、こうした作業を怠り、自分たちの常識と違うデータは、検証もせずに排除する。国立大学にしても私立大学にしても、彼らの研究には国からの補助金も出ています。当然ながら、補助金は国民の税金から成り立っているのですから、研究費をもらう以上は公共の利益に還元されるような研究をするべきです。
ですが、彼らはこれまでの常識を覆す実験や調査結果に文句ばかり言って、自分たちでその結果を調査することはしません。これでは、日本の医学がいつまでたっても進歩しないのは当然です。だからこそ、日本は、アメリカよりも医学の進歩が10年(下手するとそれ以上)遅れてしまうのでしょう。
集団検診が義務化されているのは、日本と韓国くらい
また、そもそもの集団検査自体も、国際的には不要論がささやかれています。
日本では、集団検診をして、血圧や血糖値、コレステロール値を見て、異常値があれば、検査データを正常にするために薬を出すやり方が主流です。ただ、世界的な研究で、集団検診は結果的には患者の寿命をあまり延ばさないということが近年わかってきました。