ジャニーズ、歌舞伎、そして宝塚…
2023年は、ジャニーズ事務所、歌舞伎、そして宝塚、頭文字をとって「JKT」と呼ばれる、いずれも慣習を重んじる芸能の世界が社会問題となった。
透明性が求められる時代にあって、しきたりをはじめとする慣習に治外法権は許されなくなった。
芸能界以外でも、批判がタブーと言われていた電通は、過労自殺をきっかけにブラック企業の代表とみなされるようになった。また、彼らが主導してきた東京オリンピック・パラリンピックに対しては、「汚職まみれの忌まわしいイベント」ととらえる向きすらある。
関西の外では、宝塚をめぐる問題は、ひとつの芸能組織の問題に過ぎないように見えるかもしれない。
けれども、2023年に続出した「JKT」、3つの集団に関する問題は、決して芸能に携わる人たちが特殊だから、では済まされない。
私たちの社会が、コンプライアンスや説明責任を、ありとあらゆる方向に求めるようになった、その結果なのである。
「阪急文化圏」の功と罪を考え直すべき
もちろん、それは正しい。正しすぎるほどに正しいし、被害者がいる以上、誰も異論を唱えられない。被害に遭った方たちを少しでも早く、適切に救わねばならないし、二度と同じような事態を招いてはならない。
宝塚歌劇団や宝塚音楽学校は、大切な文化ゆえに甘く見るべきだ、などと主張したいわけではない。
十把一絡げにするのではなく、関西と関東の違い、男性と女性の別、といった、これまで常識だと思われてきた、さまざまな感覚の差を、ひとつひとつ丁寧に見つめなければならないのではないか。
宝塚なんて時代遅れだ、と論難するのは、たやすい。
それよりも、宝塚歌劇団がどういう経緯と歴史を経て、今の窮状に至ったのか、それを考えなければならない。
「阪急文化圏」を闇雲に崩すのではなく、どのような「文化」なのか、その功と罪を考え直す。それこそが、被害者のためにも、現在の団員のためにも、そして、その文化圏を愛する人たちのために、阪急が取り組まねばならない、はじめの一歩だろう。
(*1)「阪急電鉄株式会社」公式ウェブサイト
(*2)原武史「西の阪急、東の東急」『NHK知る楽 探究 この世界 鉄道から見える日本』NHK出版、2009年、71~72ページ。
(*3)原、前掲、74ページ。
(*4)原、前掲、74ページ。
(*5)原武史『「民都」大阪対「帝都」東京 思想としての関西私鉄』講談社選書メチエ、1998年、99ページ。
(*6)「宝塚歌劇初心者ガイド」「宝塚歌劇」公式ウェブサイト