いかに「反脆弱性」をキャリアに盛り込むか

ではどうすればいいのか? 多くの失敗をできるだけ若いときに重ねること、いろんな組織やコミュニティに出入りして、人的資本と社会資本を分散した場所に形成することなどの要件が重要になってきます。

山口周『武器になる哲学 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50』(KADOKAWA)

一個一個の組織やコミュニティは脆弱なものかも知れませんが、重要なのは組織やコミュニティの存続よりも、その人の人的資本・社会資本の残存性です。仮にその組織やコミュニティが消滅してしまったとしても、そこに所属していた人たちのあいだで信用が形成されているのであれば、その人の社会資本は目減りせず、アメーバ状に分散して維持されることになります。

この考察をさらに推し進めれば、タレブの指摘する「反脆弱性」というコンセプトは、私たちが考える「成功モデル」「成功イメージ」の書き換えを迫るものだということに気づきます。先述した通り、私たちは自分たちの組織なりキャリアなりを、なるべく「頑強」なものにするという「成功イメージ」を持ちます。

しかし、これだけ予測が難しく、不確実性の高い社会では、一見すると「頑強」に見えるシステムが、実は大変脆弱であったことが明らかになりつつあります。自分の所属する組織にしても自分のキャリアにしても、いかに「反脆弱性」を盛り込むかは、大きな論点になってくると思います。

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