ストレスによってパフォーマンスが向上するものもある
ストレスや外乱やエラーによって、かえってシステム全体のパフォーマンスが上がる、というとなかなかイメージがしにくいかも知れません。例えば、いわゆる炎上マーケティングはAnti-Fragileと言えます。炎上というのは間違いなく主体者にとってはストレスでしょうが、そのストレスによってかえって集客や集金のパフォーマンスが向上するのだとすれば、これは「反脆弱な特性」と言えます。
レオナルド・ディカプリオが、失業者から年収50億円にまで成り上がった実在の証券トレーダー、ジョーダン・ベルフォートを演じて話題になった『ウルフ・オブ・ウォールストリート』では、ベルフォートが社長を務める金融トレーディング会社をコキ下ろす記事が雑誌の『FORTUNE』に掲載された際、激怒するベルフォートを妻が「There is no such Bad Publicity=世の中には“悪い広報”なんていうのはないのよ」となだめるシーンがあります。
結局、このコキ下ろす記事がきっかけになってベルフォートの会社には採用希望者が殺到し、その後、爆発的な拡大を始めるわけですから、これもまた「ストレスによってかえってシステムのパフォーマンスが上がっている例」と考えられます。
脆さを攻撃する「リスク」に対応することは可能か
人間の体もそうですね、
絶食や運動といった「負荷」をかけることでかえって健康になるわけですから、これも反脆弱なシステムだということになります。タレブが「反脆弱性」という概念を非常に重要視するのは、私たちが、非常に予測の難しい時代を生きているからです。
リスクをあらかじめ予測できれば、そのリスクに対応できるような「頑強なシステム」を組めばいい。津波に対応するためのスーパー堤防のようなものですが、ではそれは可能なのか? タレブは次のように指摘しています。