マザコン疑惑
片桐さんが彼の母親の求めに応じて、過去の離婚理由を説明しに行った後も、彼は母親や姉に結婚を認めてもらおうと説得を続けていた。その度に片桐さんは母親や姉に呼び出され、結婚を諦めるよう逆に説得された。
母親や姉は、「まだ早いから半年待って。財産狙いじゃないなら待てるはず」とか、「ちょうど母が手首を骨折したから」などと、なにかと理由をつけては入籍を延期させる。
そして3回目の延期のあとに彼は、「次は絶対に入籍するから」と言う。内心うんざりしていた片桐さんが、「その絶対とは、もしお義母さんが『入籍したら死ぬ』って言ってもするくらいの絶対なの?」と確認。すると彼は、「それくらいの絶対だ」と言い切ったので、信じて待つことにした。
ところが、彼が母親に「誰に何と言われようと今度こそ絶対に入籍する」と伝えた後、おそらく母親が姉に泣きついたのだろう。姉から片桐さんに、「あなたの両親に手紙を書くから、住所を教えなさい」と連絡がある。「そういうの、非常識だと思います」と断ったところ、今度は母親から、「娘に何を言ったの? 謝りなさい!」と言われ、彼の姉にメールを送ろうとしたところ、姉は受信拒否し、「手紙で謝れ!」と言ってきた。
「そもそも悪いと思ってないので手紙なんて書く内容がない……と困っていたところ、彼の母親から連絡が来ました。今回の謝罪の件、親族を集めて、姉と私、どっちが悪かったのか話し合い、悪いと決まったほうに謝罪をさせる会を開くから、入籍はそれが終わった後に検討する。というお達しでした……」
親族というのは、彼の母親、姉、兄、兄嫁、彼、片桐さんというメンツだった。
「兄嫁さんが参加するはずがなく、私にとってアウェーなメンツで悪人を決めるって、私の吊し上げであることは明白です。しかも、“入籍を認める”ではなくて“検討する”だけ。当然私も彼も断り続けました」
片桐さんはこの頃、「自分の人生最大の決断ともいえる結婚を、母親ひとり説得できないばかりか姉にまで口出しされて、次は絶対、次は絶対……と延期していく彼を、いわゆるマザコンなんだな……」と疑っていた。
しかし後でわかったことだが、彼は、「毒母・毒姉の執拗な支配から抜け出したい」という思いと、「親の言うことを聞かないなんて、俺は親不孝者だ……」という罪悪感で苦しんでいたという。
このとき2人はお互いに、「何で分かってくれないんだ……」という気持ちに苛まれていた。