「子どものため」は「私のため」
現在も片桐さん夫婦は義姉とは断絶し、84歳の義母とは距離を置いている。
しかし当初夫は、特に義母と距離を置くことへの罪悪感が拭いきれず、完全に拒絶しきれないままズルズルとお金を無心されていた。
「義母に勝手に手配されて、夫は実家のNHKの受信料を今も払い続けています。固定電話代も払ってほしいと言われ、押し付けられそうになりましたが回避しました。他にも、義母は猫を飼っているのですが、動物病院の費用5万円を払えと言ってきたり、親戚の葬儀のお香典を立て替えたから出せと言ってきたり、何かと理由をつけて数万円を無心してきます」
一方、義姉は息子の大学受験費用の約30万円を、自治体の低所得者向けの無利子ローンで借り入れする時に、夫に連帯保証人になることを義母経由で依頼。断り続けていたところ、義姉が息子と一緒に夫の会社に乗り込んで来て、その場で書類へのサインを強要された。
さらに義兄は、実家の塀に近所の人に車をぶつけられたことで保険屋と揉めて裁判になり、夫にも裁判への協力を要請。夫が断ると、義兄は弁護士を雇って保険屋を訴え返し、何回かの公判の後、和解金130万円を獲得。ところが義母と義兄は、「修理には足りない。裁判に協力しなかったお前が不足分を出すべきだ」と言ってきた。
そして現在も、義母からは「実家の固定資産税を支払え」、義父の遺産相続にまつわる登記変更では、義兄から「権利を放棄しろ」と言われ、結局家族に振り回され続けている。
「義家族は夫のことを老後のあてにしていたのだと思います。それなのに、私と結婚してしまったので、急いで引き出せるだけ引き出そうとし始めたのかもしれません。入籍を反対されている頃、『私たちのことを見捨てる気だろ!』と義姉が夫に言ったことでそう感じました。夫自身、母親も姉も兄も自分を金づるとしか見ていないことを実感し、最近さらに絶縁度合いが進んだように思います」
一方で片桐さんは、「今はとても満ち足りている」と話す。
「前の結婚で自分に自信を失っていましたが、今の夫に出会って、夫と本音で話し合ったり、両親に相談したり、自分と向き合ったりしていく中で、自分の価値を決めるのは他の誰でもない自分自身だと思えるようになりました。子どもに関しても、夫と不妊治療に取り組んでいくうちに、子どもがいない人生を受け入れられるようになりました」
雨降って地固まる、ということなのかもしれない。
親が毒親だと気付くきっかけは、自分が家族を持つときであることが少なくない。片桐さんの夫は片桐さんと出会ったことで、自分の家族は「毒家族だった」と気付き、今も「家庭のタブー」から逃れようとあがいている。