バス会社の9割以上が赤字

2024年4月以降は「働き方改革関連法案」により時間外労働の規制が厳しくなることで、さらなる運転手の人員が必要となる。経営体力のないバス会社が次々と金剛バスと同様の選択肢を選んでしまう可能性は大いに考えられる。

現在、路線バス各社は、コロナ禍による収入の激減で、9割以上が赤字に転落したといわれている。各社は運転士を大幅増員できるほど企業体力を残しておらず、黒字基調の路線ですら減便を余儀なくされるほど、全国的にバス運転手が足りていないのだ。

日本バス協会によると、12万人以上という必要人員に対して、実際には11万人少々しか確保できていないという。

この理由として、①職種としての不人気に加えて、②運転手を集められないほど各社の経営が弱体化していることが挙げられる。

なぜこのような状態になってしまったのか。原因を探るとともに、どうすれば減便・廃止ラッシュが全国に波及せず、今後もサービスを続けることができるか、その解決策も考えていきたい。

筆者撮影
金剛バスが毎月28日に行われる「瀧谷不動尊」縁日に合わせて走らせている臨時バス。年内廃止が濃厚となっている

あまりに厳しい労働環境

路線バス運転手の不人気の根本的な原因、それは給与水準の安さ、大型二種免許の保持者の奪い合いにつきるだろう。

厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、会社員(男女計、学歴計、産業計、賞与込み)の平均年収は496万6000円。それに対し、バス運転手の給料水準は平均で404万円だ(令和3年度賃金構造統計調査)。

バス運転に必要な大型二種免許保有者には、コロナ禍明けで需要が急速に戻った観光バス運転手、物流を担うトラック運転手なども好待遇で声をかけている。

特に金剛バスの本拠地・大阪府南部では、関西国際空港に到着するインバウンド(外国人旅行者)を迎えるため、月収40万円超えの観光バスの求人まである。金剛バスの給与は基本給19万円+諸手当(金剛自動車リクルートサイトより)であり、他業種との奪い合いを行わないと、人材を確保できない状態だ。

さらに、路線バスの運転手は通常のサラリーマンとは異なる変形労働時間制が適用されているため、勤務体系は連勤がある上に不規則だ。特に、通勤・通学ラッシュをさばくための「朝と晩だけ出勤、その間は休憩」という「中休制度」(会社によって「ロング」「解放ダイヤ」などの呼称がある)を採用するバス会社が増加してからは、給料は変わらないのに拘束時間が長くなり、運転手のストレスだけが増加していった。

別の会社のバス運転手は、「終点からの折り返しをバス車内で待つ際、真冬でも(ガソリンを食う)エンジンと空調は絶対に切れ」と言われたそうだ。さらに乗客からのクレームは会社ではなく基本的に「運転手のせい」で丸投げされた運転手もいて、とにかく運転手が報われない事例が、あまりにも多すぎる。