労働者の勤務の質が悪いのを棚に上げ…
ところが2022年のランキングを比較すると次のように業界地図が塗り替わっていた。
半導体の世界シェア(売上高)ランキングは1位がインテル、2位がサムスン、3位がTSMC、4位がSKハイニックス、5位がマイクロン、6位クアルコム、7位ブロードコム、8位エヌビディア、9位テキサス・インスツルメンツ、10位にインフィニオンと、日本企業は十傑に入っていないのである。
「中国脅威論」が日本を巻き込む大投資作戦に転換した米国は貿易赤字を自らの努力不足や工場の非効率を無視し、とくに労働者に怠けものが多く、勤務の質が悪いのを棚に上げて「米国は競争力を持ちながら、日本市場の閉鎖性によって対日輸出が増加しない」などと論理的矛盾をかまわず声高に主張した。
あの頃、ワシントンDCへ行って親しいアメリカ人(多くが知日派だが、経済摩擦では反日的だった)に会うと、ウォークマンの新型、キヤノンのカメラを欲しがった。雑誌の取材で謝礼に(とくに著名人とのインタビューで米国では謝礼金を受け取らない)、ニコンかキヤノンのカメラが喜ばれた。
米国にとっての半導体は「軍事技術の根幹」
米国にとって半導体の位置づけは日本のような「産業のコメ」ではなく「軍事技術の根幹」という認識である。それゆえ国内の半導体産業の苦境は国家安全保障上の脅威とする地政学的覇権を意識する発想に短絡する。
実際にジェット戦闘機、ミサイルなどの製造には高度な半導体部品が必須である。将来の無人潜水艦、超音速ミサイル、攻撃用ドローンなどに必須だからこそ欧米と中国は次期半導体開発に血眼となるのだ。
第二次半導体協定が日米間で締結され、「日本の半導体市場における外国製のシェアを20%以上にすること。日本の半導体メーカーによるダンピングの防止」が謳われた。この日本政府の安易な協定合意によってNECがまず失速し、米国インテルが1位に躍進した。
DRAMのシェアでは韓国のサムスンが日本メーカーを抜いた。日本の半導体産業は決定的に弱体化させられた。同時期にIC(集積回路)が高度化し、ビジネスモデルはパソコンに移行していた。ワープロは過渡的な技術に過ぎなかった。筆者の書斎からもワープロは消えた。中味のソフトはビル・ゲーツらのマイクロソフトが独占し、アイフォンやパソコンはスティーブン・ジョブスらのアップルが牽引した。
NECと日立製作所は合弁でエルピーダメモリーを立ち上げたが、奮闘及ばず経営破綻、米マイクロンに買収された。鳶に油揚げをさらわれたのである。