「2人に1人が発症」でも儲かるワケ
【後田】そうですよね? それで、先の商品設計の専門家や他の関係者にもお尋ねしたところ、こんな説明を受けました。
「基本的に高齢者に多い病気だが、保険に加入するのは現役世代の人たちだから、すぐに給付金を支払うようなことにはなりにくい」
「2人に1人ががんになるとしても、商品を設計する段階で、2人に1.5人ががんになると仮定するなど、給付金を支払う可能性を高めに見込む。そうすると保険料は高くなるが、その分、会社にお金が残る」
「入院日数に対応した保障がセットされたプランの場合、通院治療が主流になると、やはり会社にお金が残る。各種の治療法に対応した保障についても、その治療が行われる確率がわかれば、会社にお金が残る保険料の設定は可能。したがって、様々な保障を組み合わせることで、会社のリスクを軽減できる」
ということでした。要は確率論が通用するかどうかなんです。
仮に「戦場の最前線にいる兵士を対象にした死亡保険が商品として成立するだろうか?」と想像してみるといいと思います。今日明日にでも、加入者全員が同時に保険金支払いの対象になってもおかしくないんです。無理ですよね?
保険料は、全員の保険金総額に保険会社の経費などを乗せた額になり、分割ではなく、加入時に一括で払ってもらわないと、会社としては困るでしょう。そうすると、「戦死したら3000万円出します。つきましては、従軍前に3200万円払ってください」といった話になるわけです。
【有司】ありえないですよね。
【後田】はい。保険……というより商品になりません。先ほどのシンプルな兵士向けの保険に比べれば、がん保険は、保険会社にとって余裕がある商品設計が可能になると考えられます。加入者全員に保険金を支払うことになるとは、さすがに考えにくいですし、支払うまでに時間の余裕もある。加えて、商品設計を複雑にすることで余裕を持たせることも可能、というわけです。