もう一つは、改善の努力です。今回の分析では、一般的なビジネスパーソンの仕事の進め方を念頭に置いてリスクイベントの発現確率と影響度を設定しました。ただ、これらは仕事の進め方を工夫することによって小さくすることが可能です。今回の分析でも、かなりの部分まで改善が進んだとして再シミュレーションすると、100時間の仕事はほとんど107~113時間の範囲に収まりました。

これは確率に左右されるので、一回一回を切り取れば、「改善前は120時間だったのに、改善後は130時間かかった」という逆転現象も起こりえます。しかし、それは結果論。仕事を重ねれば、理論的には改善の努力をした人ほど100時間に近づきます。

製造業には「1秒1歩1グラム」という標語があります。これは最小単位まで徹底的に作業プロセスのムダを省こうという姿勢の表れ。個人の仕事でも、そのくらいのつもりで改善を重ねて、時間リスクの最小化を図りたいところです。

ファンクショナル・アプローチ研究所 代表取締役社長 横田尚哉(よこた・ひさや)
改善士。世界最大企業であるGE(ゼネラル・エレクトリック)の価値工学に基づく分析手法を取り入れて、総額1兆円の公共事業改善に乗り出し、10年間でコスト縮減総額2000億円を実現させた。「30年後の子供たちのために、輝く未来を遺したい」という信念のもと、そのノウハウを潔く公開するスタイルは各種メディアの注目の的となっている。全国から取材や講演依頼が殺到し、コンサルティングサービスは約6カ月待ち。また、「形にとらわれるな、本質をとらえろ」というメッセージから生み出されるダイナミックな問題解決の手法は、業務改善にも功を奏することから「チームデザイン」の手法としても注目が高まっている。
(村上 敬=構成 ファンクショナル・アプローチ研究所=図版提供)
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