重要なのは「一人あたりの付加価値額」

世の中には、少し儲かるようになると、すぐに贅沢ぜいたくをするようになる経営者も少なくありません。しかし、余裕ができたのなら、お客さまの視点で独自のQPSを考えられる、良い人材を会社に入れるために使うべきです。

当たり前の話ですが、一人当たりの付加価値額を増やさなければ、企業の利益が増えて従業員の給料が上がることもなく、良い人材が集まることもありません。良い人材を集めれば、一人当たりの生産性も上がり、余計に良い人材を集めることができるという好循環に入れます。

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企業は、来るべき危機に備えて、大企業であれば最低でも月商1カ月分、中小企業であれば月商1.7カ月分の資金をつねに手元に置いておくべきです。危機時だけでなく、資金に余裕がないと、経営者の意識が「お客さま第一」ではなく「資金繰り第一」になりがちなものです。

私が思うに、こうしたお金のリテラシーは、経営者はもとより、ビジネスパーソン全般に必要不可欠ですが、実際に備えている人は少ないかもしれません。同様に、コストカットの重要性も、誰もが分かっているものの、適切に実行に移されるケースは多くありません。

しかし、それではダメなのです。そうした企業は、結局のところ、たとえ少額でもお金を大切にするというリテラシーが欠けていると指摘せざるを得ません。

「意識を変える」ではなにも変わらない

近年の日本で、コストカットの成功例としてもっとも有名な事例の一つがJALの再建でしょう。2010年、戦後最大の負債額を抱えて経営破綻したJALですが、稲盛和夫さんが会長に着任して以降、奇跡的に再生しました。

成功の理由を端的にいえば、「考え方」を変え、統一したということが挙げられますが、同時に「何をすれば、どれだけのコストが削減されるか」を、それぞれの部署はもちろん、一人ひとりが考え始めたからです。作業で使う軍手一つまで、使い方や仕入れを見直したと聞きました。

こういうとき、往々にして「意識を変える」という言葉が用いられますが、意識などそう簡単に変わるものではありません。無駄をしているということは分かっていても、「自分たちの部署だけやっても仕方がない」「波風を立てないほうがいい」という風潮があるものだからです。

そこで、とにかく何でもいいから行動に移すのです。たとえば、毎日100円でもいいから節約できることがないか、部内で話し合ったうえで実践する。この「実践」が重要です。稲盛さんもJALに着任した後に、従来のパターンを変えないと立ち直れないという旨の言葉を社内に向けて発信しています。