「明」のニュースの細部に潜む「暗」の構造

イオンの決算では長年、スーパー事業が足を引っ張る状況が続いていました。イオン全体の収益構造としては金融事業、イオンモールの運営などの不動産事業、そしてドラッグストア事業が稼ぎ頭という状況だったのですが、ここでようやくスーパー事業が4本目の柱として200億円の営業利益を稼げるようになったというのが今回の決算の明るい話題でした。

中でも目を引いたのがPB商品のトップバリュが4893億円の売上をたたき出したことです。スーパー事業3兆円の売上に占めるPBの比率は単純計算で16%です。値上げラッシュの昨今、消費者がナショナルブランド商品からPB商品へと移行し始めている流れを品質の高いトップバリュでうまく刈り取った形です。

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こうして日本最大のスーパーストア事業を営むイオンが、収益力を上げてきたというのは「明」に相当するニュースなのですが、実はその細部には「暗」とよぶべき構造が残っています。

GMS事業よりもSM事業の方が収益率は高い

これは以前から指摘されてきた構造ですが、総合スーパーであるGMSよりもよりコンパクトなSM事業の方がイオン全体の中で収益率が高いのです。営業利益200億円のうち売上高の少ないSM事業が164億円とその大半を稼ぎ、売上高の多いGMSは36億円の利益しか稼いでいません。

これを指摘するとフェアな比較といえないかもしれませんが、SM事業を除いた数字で単純比較すればイオンのGMS事業は、大きさはイトーヨーカドーの2.3倍もあるのに営業利益はイトーヨーカドーよりも少ないとも言えるのです。

しかもGMS事業の中でも業績が大きく分かれています。実はイオンのGMS事業はコロナ禍で経営統合をし、スリム化で筋肉質になった地方スーパーが好調です。主要子会社のイオン九州、イオン北海道がイトーヨーカドーの3倍以上の利益率をたたき出している一方で、売上9016億円とグループ最大子会社のイオンリテールが▲45億円の営業赤字なのです。