就任前の副知事にも「退職金辞退」の踏み絵を踏ませたか

坪内議員らの質問にはなかったが、2016年2月県議会で川勝知事はこんな答弁をしている。

「大須賀副知事と土屋副知事は本県の再就職の取り扱いを踏まえて自らの意思で退職手当を辞退するものと承知している。吉林氏につきましても、副知事として県議会の承認をいただき就任した場合には両副知事と同様に辞退されるものと聞いている」

筆者撮影
県議会総務委員会で元副知事の退職金問題が取り上げられた(=静岡県庁)

今回の県議会総務委員会で、「副知事に就任する前に意思確認を行った事実」があったかどうかを問われたが、担当の人事課長は「事務方ではそのような事実はない」と就任する前の退職金辞退の意思確認はないと回答した。

また、京極仁志・県経営管理部長は「副知事就任の際、退職金の制度があることを説明している」とも回答した。

これでは川勝知事の答弁と矛盾してしまう。つまり、事務方の知らないところで、川勝知事は副知事予定者と退職金辞退のやり取りをしていたことになる。

知事答弁の時点では、土屋氏は任期を3年半残している段階であり、吉林氏にいたっては副知事に就任する以前のことである。

これではどう考えても、副知事が自らの意思で判断するのではなく、任命前に退職金を辞退するのかどうかを川勝知事が確認していたことは明らかだ。

そのような事実を事務方は全く承知していなかったことになる。

つまり、副知事の退職金辞退は、任命者の川勝知事が何らかの形で“踏み絵”を示した可能性が高いとも言える。

「県の再就職の取り扱い」というおかしな理屈

もともとは、川勝知事が1期目の退職金を辞退するのを踏まえ、大須賀氏は副知事就任に当たって、川勝知事に倣って退職金辞退を表明したのだろう。

ところが、2期目で川勝知事のみが退職金を受け取り、大須賀氏ははしごを外された格好となった。

土屋、吉林の両氏については「静岡県の再就職の取り扱いに従う」という都合の良い理屈を考えた。

となれば、来年4月に任期の切れる出野副知事も退職金を受け取るわけにはいかなくなるわけだが、誰が考えてもおかしな理屈である。