元側近の静岡市長が真っ向から反論
リニア中央新幹線の妨害を続ける静岡県の川勝平太知事が、リニア南アルプストンネル静岡工区の工事で発生する残土置き場の建設を巡って、予定地の燕沢付近の選定が不適格であり、残土置き場計画を見直せとJR東海に迫っている。
これに対して、元県副知事で県リニア対策本部長だった難波喬司・静岡市長が2023年9月6日、「燕沢付近に問題はなく、現在地のツバクロ残土置き場計画を前提に議論すべき」と真っ向から反論した。
リニア問題の対応で静岡県、静岡市の溝が深まっていることが明らかになった。
燕沢付近の残土置き場について、静岡県は県の環境影響評価条例の手続きを根拠に、JR東海の保全計画に地元の理解が得られないなどとして同意しない姿勢を示してきた。
大井川下流域の島田、焼津など複数の自治体が絡む「水問題」とは違い、残土置き場に関係するのは静岡市のみ。その地元の市長が燕沢付近を認める方針を示したのだ。
そもそも環境影響評価法がJR東海に求めているのは、「調査、予測の結果を踏まえ、個々の事業者にとって実行可能な範囲内で環境への影響をできる限り回避し、低減する」観点で、「リニア事業に伴う環境影響の程度を明らかにすること」だと難波市長は説明した。
「環境影響評価」を理解できない川勝知事の「行政音痴」ぶり
今回、難波市長が同法を根拠に静岡県の主張が間違っていると反論したことで、川勝知事のリニア妨害のシナリオに大きな穴が空いた。
9月6日に開かれた静岡市リニア環境影響評価協議会で、石川英寛・県リニア対策本部長代理(県政策推進担当部長)は、河川法を根拠に難波市長へ異議を唱えた。
石川本部長代理の異議に対して、難波市長はずさんな法律解釈を厳しく批判した。
今回の論点も、「深層崩壊」(表土層だけでなく、深層の風化した岩盤も崩れ落ちる現象で、自然環境に大きな被害をもたらす)は、JR東海の残土置き場があるなしにかかわらず起きる自然災害であり、もし、「深層崩壊」を問題にするならば、JR東海ではなく、大井川上流部の河川管理者である静岡県が役割と責任を担うことが当然であるというものだ。
それにもかかわらず、「深層崩壊」対策を事業者のJR東海の責任になすりつけしてしまう川勝知事のデタラメぶりについては、8月21日のプレジデントオンライン「静岡県の仕事もJRになすり付け…リニア妨害のためなら「残土置き場」にもケチつける川勝知事の“知事失格”」で詳しく伝えた。
本稿では、難波市長と石川本部長代理とのやり取りなどから、静岡県の主張は単に川勝知事のリニア妨害のシナリオに沿った底の浅いものであること、さらに「環境影響評価」を全く理解できない川勝知事の“行政音痴”ぶりをわかりやすく伝える。