名称変更は臭いものに蓋をしただけ
また社名を変更するとはいえ、エージェントとしての機能を残すことは、事実上の存続を意味すると考えられる。グループ名の変更も同じ。でも少なくともジャニーズの名前を残すよりはベターという評価にはなるのだろう。
名称等をどうするかの前に、まず犠牲者への償いが果たされるべきではないのか。そう考えるアメリカZ世代には、今回の決定はある意味、臭いものに蓋をしたように見えている。
また今後は、ジャニーズと契約を結んでいた日本企業の対応も難しくならざるを得ないだろう。しかし、ジャニーズを切るかどうかだけを考えても、おそらく答えは出ない。なぜなら今起きていることは、より広い課題を含んでいるからだ。
シャンシャンはこう言う。
「問題は、日本のボーイズアイドルの中には、まだ会社との契約に縛られている人がたくさんいることだよね。芸能界の若手アイドルの中には、所属会社への借金がチャラになるまで給料をもらえないって聞いたことがある」
ジャニーズ以外でも、エンタメ業界で同じような搾取や人権問題が起きていると指摘しているのだ。
ではどうすればいいのか? ここでもアメリカZ世代の考え方がヒントになるかもしれない。
一過性のもので終わらせてはいけない
Z世代はキャンセルカルチャーによって、正しくないと感じた個人や企業を激しく糾弾し、時には引きずり降ろそうとする。しかし彼らがそれを正し、人権や社会正義を守るための新たな道を選び、社会に向けてメッセージを発信しはじめた時には、納得して受け止めるのだ。
ジャニーズ問題にとどまらず、人権を守るためのメッセージを積極的に発信する努力は、企業としての責任でもある。その責任ある姿勢を見せ続けることは、これからの若者の支持を得るための大きなチャンスでもある。
最後にシャンシャンの一言で締めくくりたい。
「心配なのは、このスキャンダルが一過性のものになり、1~2年で忘れられてしまうこと」
前述したように、アメリカのハーヴェイ・ワインスタイン事件は、#Metoo運動を燃え上がらせ、その連鎖により企業の人権に対する責任感を飛躍的に高め、社会に大変革をもたらした。
日本社会がこの事件をジャニーズだけの問題で終わらせてしまったら、起こるべき変化は起こらず、国際社会に遅れをとることにもなりかねない。
そうならないためには、メディアも企業も共に論議をつくし、行動しなければならない。