ワインスタイン作品はなぜ消されないのか

一方、ワインスタイン事件では、当事者であるワインスタインは、疑惑発覚後に自身のプロダクション会社から解任された。その後会社も倒産したが、ワインスタインがプロデュースし、彼の名前がクレジットされた作品は今でも普通に見られている。

などなど、まさに世界の映画史に残る名作、ヒット作は枚挙にいとまがない。

犯罪者のプロデュース作品となれば、日本だったら即座に放映禁止、配信削除になったりしそうだ。しかし、アメリカではそうはならない。こうした作品が名作であること以上に「作品に関わった俳優からスタッフまで多くの人々が、ワインスタインという1人の犯罪者のために犠牲になるのはフェアではない」という考え方があるからだ。

この事件で「罰を受けるのは誰?」

ワインスタイン映画が見られているもうひとつの理由は、「性暴力犯罪」という明確な結論が出され、責任の所在が明らかになって、社会が一応納得したからだ。

前述した通り、ワインスタインは有罪判決を受けて39年という刑期で服役し、社会的な制裁も受けている。約40人の犠牲者に対しては、民事訴訟で総額1700万ドル(25億円)の賠償金が支払われる事が決定している。事件発覚から4年かかっているが、その間に司法とメディアが徹底的に事件を掘り下げたことで、この問題はひとつのけじめをつけた。

しかしジャニーズ問題は違う。

東山紀之・ジャニーズ事務所、SMILE-UP.社長
撮影=阿部岳人

「ミレニアル・Z世代研究所」のシャンシャンはこう指摘する。

「被害者のために正義はどう果たされるの? 罰を受けるのは誰?この事件に間接的に関与した人たち? それは難しいでしょう。誰かが虐待の手助けをしたという確かな証拠を、裁判所が押さえることができるとは思えないもの」

当事者はすでに亡くなり、(今のところ)誰も罰せられず法的責任を問われないため、「性犯罪」に対する正義が果たされる可能性は低い。シャンシャンはそれを懸念しているのだ。

賠償のあり方も裁判所の管理下ではない。外部に監視機関があるとはいえ、その役割は不透明と批判されても仕方ないだろう。