100人が試食し、投票結果が集計された

Aは普通のラッサム、Bは味の素が入ったラッサムだ。

人々は物珍しさもあって鍋が置かれたテーブルに押し寄せるようにやって来た。

オレンジ、ピンク、水色など色とりどりのサリーをまとった中高年の女性が多いが、Tシャツ姿の若者や、白髪の男性などもいる。

試食をした人が100人に達したところで、投票結果が集計された。

「それでは、アンケートの結果を発表します!」

厨房着姿のシェフがマイクを手に、トラックの上の特設ステージに立ち、タミル語でいった。

背後の赤と白の大きな看板にも、「美味しいラッサムは味の素なしではつくれない」というキャッチコピーがタミル語で書かれている。

「ちなみに、みなさんにはお知らせしませんでしたが、こちらのAの鍋が普通のラッサム、Bの鍋が味の素を入れたラッサムでした」

自分の左右にある台の上に置かれた、A、Bそれぞれの蓋付きの黒い鍋を指していった。

「それでは結果を発表します。……Bが美味しいと思った人が80人!」

わあーっという歓声と拍手が湧き起こった。

「Aが美味しいと思った人、およびどちらも同じと答えた人が20人でした。『美味しいラッサムは味の素なしではつくれない』ことが証明されました!」

拍手は続く。

人々の反応は目覚ましく、イベントは大成功

「それでは続いて、ラッキー・ドロー(抽選)の結果を発表いたします!」

インド人のセールス・マネージャーがいった。

試食をした人たちには抽選券が配られ、複数の人に賞品が当たるようになっていた。

「1等は、31番です!」

歓声が上がり、当選したサリー姿の中年の女性がステージへと案内される。

「コングラチュレーションズ!」

キャンペーン用の赤と白のベースボールキャップに、味の素の赤いお椀のマークと社名が入った白いTシャツ姿の宇治がにこにこしながら賞品を贈呈する。

賞品は「ディワリ」のお祭りのときにマサラチャイ(スパイス入り紅茶)を飲みながら食べる「ミターイ」という地元の菓子の詰め合わせだった。ナッツやスパイスを牛乳と砂糖で練ったものや、小麦粉にたっぷりの砂糖を入れて餃子のような形にし、油で揚げたものなど、何種類かのセットで、派手な包装がしてあった。

続いて2等以下が発表され、インド人社長のマノハランや他の社員が賞品を贈呈する。

さらに味の素のサンプルが全員に配られた。

人々の反応は目覚ましく、イベントは大成功だった。

写真=宇治氏提供
チェンナイの試食会で抽選の景品を贈呈する宇治弘晃氏