「壊滅的な打撃」懸念

ファストフード業界の労働者の待遇が改善される反面、フランチャイズ店を経営するオーナーたちにとっては死活問題でもある。

CNBCによると、1000人以上のマクドナルドのフランチャイズ店舗オーナーらが加盟する「全米オーナー協会」は、カリフォルニア州議会がFAST法案を可決したことを受けて会員宛てのメモを発行。同州のフランチャイズ加盟店にとって「壊滅的な財務的打撃」になるとして反発した。

厳しい労働市場と高インフレが迫るこの時期、法案によるさらなる経営への打撃を懸念している。

会員宛てのメモによると法案は、州内の各店舗にとって、年間25万ドル(約3720万円)の負担増を意味するという。団体は、このコストは「到底このビジネスモデルでは吸収できない」と訴えている。

米マクドナルドの加盟店にとって、苦境が重なる。ロイターは9月23日、米マクドナルドが来年1月1日以降に新規開店する店舗を対象に、ロイヤリティを4%から5%に引き上げると報じた。引き上げは約30年ぶりで、実に25%の上げ幅となる。マクドナルドは全米で約1万3400店舗を展開しており、昨年末時点でその約95%はフランチャイズ店が占める。

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賃上げの波に他業界が怯えている

賃上げはファストフード業界のみならず、フルサービスのレストラン業界に波及するとの見方がある。米レストラン業界専門のニュースサイト、レストラン・ビジネス・オンラインは、「業種と給与レベルと問わず、賃金に大きな影響を与えることが予想される」と指摘する。

サンフランシスコを拠点とする労働者権利団体のワークプレイス・ポリシー・インスティテュートを運営するマイケル・ロティート氏は、記事の中で、カリフォルニア州ではおよそ1760万人が働いており、そのうち約760万人が時給20ドル以下だとの推算を示している。

「クイック・サービス・レストラン(ファストフード店などのカジュアルな飲食店)のように、離職率が100%に近く、50万人が働く業界では、常に求人枠が出ている。よって、時給20ドル以下の人であれば、その仕事を欲しがるでしょう」

「つまり、(時給が)20ドルを下回るレストランは、人材を維持し惹きつけるにあたり、大きな問題を抱えることになるはずです」

他の業種にも賃上げの影響が及ぶ可能性がある。カリフォルニア州ロヨラ・メリーマウント大学のソン・ショーン教授(金融・経済学)は、CBSニュースに対し、最低賃金の引き上げは経済に利益をもたらすこともあれば、悪影響を及ぼすこともあると指摘する。

ある業界の賃金が上がると、他の業界の給与も上がる傾向があり、他の労働者にも恩恵があるという。しかし、賃金の上昇はインフレを促進し、あらゆる商品価格を上昇させるおそれがある。