AI活用が「本土爆撃」を可能にした
戦争に例えると、これまでの自損型輸入は「敵地戦」だったとも言えます。すなわち、中国企業は中国本土から出ることなく、日本人業者が中国に赴いて低価格の武器をこしらえ、業者が完成品を日本市場に持ち込んで国産企業を攻撃してきました。ところが、シーインは中国企業が日本企業を介在させず、直接日本本土で事業を行い、アプリやウェブサイトで直接、日本人に販売しています。これは私たち日本人から見れば、「本土決戦」であり「本土爆撃」とでも呼ぶべき営業手法です。
なぜ、こうした経営が可能になったかといえば、中国が強みを持つAIをフルに活用しているからで、同社は一説には「新商品開発が世界一速いとされてきたZARAの4倍の数の新商品を、ZARAよりずっと短い期間に作る」と言われるほどの、超高速の商品開発力と市場投入スピードを武器としています。
しかも、これだけの規模とスピードでの企画、設計、開発、製造を可能にしつつ、世界中から膨大なトレンド情報を収集しながらも、女子大生に聞いたところ、洋服、バッグ、雑貨、アクセサリーの値段はしまむらやGUの価格を下回っており、試着や注文もアプリ内で完結し、国際配達も迅速で安価です。
ユニクロやしまむらは「日本代表」?
なかには「買って損した」、「写真に騙された」、「商品説明の日本語がキモい」とクレームが集まる商品もあるそうですが、低価格の割に見栄えと機能性が高い商品も多く、そうした商品に対する日本人ユーザーの驚きがSNSで瞬時に拡散され、シーインの名を若者の間に急速に浸透させています。
面白いのは、同社の動向を報じる日本のアパレル、ファッション関係のネットメディアのうち、いくつかのサイトや業界の専門家が、ユニクロ、しまむら、ニトリを「ナショナルブランド」と呼び、「シーインの課題はブランド力と信用」、「価格は安くても品質、技術、デザインはユニクロに及ばない」、「日本人消費者の高い要求を満たせるかが今後のカギ」と評していることです。
私には、「ユニクロやニトリのどこがナショナルブランドなんだ」、「ユニクロやしまむらも昔は同じだっただろう」、「全て社名と顔だけ日本の自損型業者じゃないか」、「コスパ病感染者の要求のどこが高いんだ」としか言いようがありませんが、業者や御用インフルエンサーたちは、かつて自分たちが自損型輸入によって真のナショナルブランドを駆逐したように、今度は自分たちが亜流のシーインに追撃される段階を迎えて、勝手に「日本代表」を自任したくなったのかもしれません。