ジェンダー平等より派閥を優先した

この「ゼロ人事」について朝日新聞は、副大臣・政務官ポストは閣僚人事以上に自民党の各派閥の意向が尊重され、最大派閥の安倍派だけでなく茂木派、岸田派が官邸側に示した要望リストに女性の衆院議員はゼロだったと指摘している。

朝日新聞【岸田政権、副大臣・政務官なぜ女性ゼロ 限られる人材、派閥の意向

つまり自民党の各派閥はジェンダー平等より、派閥の論理、自派閥の男性議員の処遇を重視したということだ。

だが最大の問題は自民党の女性議員の少なさだ。党所属の国会議員のうち女性は12%。閣僚だけでなく副大臣・政務官クラスにまで女性を満遍なく任命しようとすると、同じ人が何度もポストに就くことになる。ゼロ人事に対しては、

「適材適所でやった結果、ご覧のような男女バランスとなった」(岸田首相)
「適材適所でやった結果、女性がいなかったということだ」(鈴木財務相)

という釈明が続いたが、この発想がダイバーシティの本質を理解していないという証左だ。

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ダイバーシティの本質は、意思決定の場に多様な価値観を入れるということだ。企業でも女性管理職の目標数値を設定しようとすると、「実力もないのに抜擢するのは逆差別だ」という声が上がる。だがまず意思決定の場に多様性を持たせることがゴールなのだから、同じ人が何度もやろうが、まず「多様性ありき」でなくてはならない。

後進国だから数を気にしなければいけない

同じ人が何度も就任することが問題なのであれば、女性の母数を増やすべきだ。にもかかわらず、立候補者に女性を一定割り当てるクオータ制の義務化に最も消極的なのは自民党だ。

この「女性ゼロ人事」には自民党外からも同調する声が上がった。国民民主党の榛葉賀津也幹事長は記者会見の場で、

「もう『女性が何人』とか、そういう時代じゃないと思うよ。女性が多いからいいとか閣僚に女性が何人とか、副大臣・政務官に女性がいないとか、こういうジェンダーの数をうんぬんしているのは日本だけですよ」

と発言し、こちらも猛反発を浴びた。数をうんぬん言わなければならないのは、圧倒的に日本が遅れているからだ。こういう発言は少なくとも30%を達成し、政治分野の138位を大きく改善してから言ってほしい。