最も健康にいい食事とは
では、健康的な食事とは具体的にはどのようなものでしょうか。ジャーナリストのマイケル・ポーランは、何百もの食事に関する研究を検証したあと、「食事を摂りましょう。ほどほどに、おもに植物を」という有名な言葉にまとめました。
彼が検討した研究では、加工されていない食品をそのままのかたちで食べ、食事の大半が野菜で、毎日の摂取カロリーを低く抑えた場合に最も効果を得ることができたといいます。世界がん研究基金やアメリカがん研究所、アメリカがん協会も同様の結論に達し、最近、主要な食事療法の研究を見直し、がんを回避したい人はおもに植物由来の食事を摂り、赤身の肉や加工肉、アルコールを制限するように推奨しています。
また、欧米の研究チームは、8万5000人以上の被験者を対象とした90以上の研究を分析し、健康的な食事を遵守することで、とくに大腸がん、乳がん、肺がんのリスクが大幅に低減する可能性があると結論付けています。研究者たちは、健康的な食事にはおもに野菜や果物が含まれ、西洋の食品(脂肪分、塩分、糖分、精製、動物性食品)は少量だと判断しました。その逆もまた真だと言えます。不健康な食事パターン(おもに西洋の食品で構成されたもの)は、がんのリスク上昇と関連していることがわかりました。
最新の研究では、そもそも健康的な食事はがん、とくに大腸がんにかかるリスクを減らすことが示されています。
研究者グループは、Healthy Eating Index-2010、地中海食、Alternative Healthy Eating Index-2010、Dietary Approaches to Stop Hypertension(DASH diet)など、さまざまな食事スコアに関する研究を見直しました。彼らの研究では、45~75歳の20万人近い被験者が分析され、すべての人種/民族グループにおいて、質の高い食事は大腸がんのリスクの大幅な低下と関連していました。
ここでいう「質の高い食事」とは、野菜や果物を中心に、全粒穀物、豆類、ナッツ類、健康的なオイルが多く、赤身の肉、砂糖が多い飲料、アルコール、ナトリウムが少ない食事のことです。
食事ががん患者の生存率を向上させる
がん患者にとってとくに興味深いのは、食事ががん患者の生存率を向上させることが最近の研究で明らかになったことです。オーストラリアのある研究では、卵巣がんを患った女性が診断時に記入した食事に関するアンケートを調査し、5年間の生存率を追跡することで、食事と生存率との関連性を調べました。
食物繊維の摂取量が最も多い女性は、最も少なかった女性に比べて、卵巣がんからの生存率が31%増加し、緑黄色野菜、果物、魚、多価不飽和脂肪および一価不飽和脂肪(食品)、アブラナ科の野菜を多く食べ、緑茶を飲んでいた女性も生存率が大きく向上しました。その一方で、グリセミック指数が高い(糖分が多い)食事をしている参加者は、生存率が低くなりました。
別の研究では、ヒスパニック系乳がんサバイバーを分析し、健康的な食事ががんの再発リスクを低減させることを明らかにしました。この研究では、乳がん生存者のグループが、12週間にわたって合計24時間おこなわれる9セッションのプログラムに参加。このプログラムには、栄養教育や調理実習、食材の買い出しなどが含まれていました。対照群には、食事に関する推奨事項のみが書かれた文書が配布されました。
研究者たちは、研究開始時、6カ月後と12カ月後の血液サンプルを分析した結果、短期間の介入が、果物や野菜の摂取量の増加など長期的な食生活の変化につながったと結論づけました。さらに、こうした食生活の変化は、がんの再発のリスク低減に関連するバイオマーカーに大きな変化をもたらしました。