セブン&アイの力をもってしても難しかった
地方では人口の減少、少子化、高齢化の進行によって過疎化が進み、個人消費がしりすぼみになった。そのため、閉店に追い込まれる百貨店は増えた。2006年時点、277あったわが国の百貨店店舗数は、2019年に208に減少した。この間、西武百貨店では筑波店や八尾店などが閉店した。東京都内を見渡しても、大手百貨店の跡地に家電量販店が大型店舗を構えるケースは増えた。
わが国の百貨店が得意としてきた、“外商”の社会的な役割も低下した。特に、法人顧客との取引は減少した。バブル崩壊後、多くの国内企業はコストの削減を優先した。その中、得意先などに送る“お中元”や“お歳暮”関連の支出が削減され、外商ビジネスの厳しさは増した。
厳しさ増す事業環境に対して、そごう・西武は能動的に業態を変革することが難しかった。セブン&アイの商品開発や流通体制をもってしても縮小均衡から脱却することはできなかった。
地方店舗の削減はさらに加速する恐れ
今後の展開を、そごう・西武、セブン&アイ、わが国小売業界の点から考察すると、そごう・西武の収益力が上向くか、楽観できない。ヨドバシは西武の池袋本店と渋谷店、そごう千葉店の建物や土地などを取得し出店する方針だ。これまでのヨドバシの事業運営を見る限り、相応の成果を実現する可能性はある。
一方、福井、秋田などの地方店舗は、フォートレスの傘下で再建を目指すことになる。これまでの収益力の低下を見る限り、再建の道のりは険しいものにならざるを得ないだろう。収益性が高まらない場合、投資ファンドが大がかりなリストラを実施する可能性は高まる。
次に、セブン&アイは“イトーヨーカ堂”などのスーパー事業をどうするか、方針を明確にしなければならない。それは、アクティビスト投資家の理解を取り付け、国内外でのコンビニエンスストア事業の成長力を高めるために必要な要素の一つになるだろう。