約60年ぶりのストライキに発展

また、「セブン&アイは、成長を加速するためにコンビニ事業に集中すべき」という、“物言う株主”の要求の高まりにも直面した。2023年3月、バリューアクトはセブン&アイに対して4人の取締役の退任を求める株主提案も行った。セブン&アイは、提案に反対した。

一方、そごう・西武の労働組合は、「売却後の雇用をどう維持するか、具体策が示されていない」と反対姿勢を強めた。西武池袋本店のある豊島区の首長も、「西武百貨店の池袋本店は街づくりに不可欠」と反対意見を示した。

セブン&アイは労働組合と交渉を重ねたが、妥協点を見いだすことは難しかった。8月31日、そごう・西武の労働組合は百貨店業界で約60年ぶりとなるストライキを実施し、西武池袋本店を全館休業とした。売却のさらなる遅延を避けるために、セブン&アイは一部の債権を放棄し売却を完了せざるを得なかった。

百貨店の売上高は30年で半分以下に

セブン&アイによるそごう・西武売却から見えてくるのは、わが国で百貨店というビジネスモデルの有効性が低下し、その維持が困難になりつつあることだ。2021年に経済産業省が主催した“百貨店研究会”の資料からそれが確認できる。

1991年時点で、わが国の百貨店業界の売上高は9.7兆円だった。1990年代は、9兆円を挟んで売り上げは横ばい圏で推移した。2000年以降、売上高は右肩下がりの傾向をたどった。2020年の売上高は4.2兆円、30年前の半分以下の水準だ。衣料品、雑貨、食料品、商品券など主要な品目の売り上げは減少した。

百貨店の売り上げ減少と対照的に、わが国の小売業界ではネット通販、コンビニ、ドラッグストアの存在感が高まった。特に、アマゾンなどの登場によって消費者は、百貨店に行かなくても必要なモノを手に入れられることに気づいた。コロナ禍は、主要駅前などにまで足を運ぶよりも、ネットや近場のドラッグストアなどで買い物をする人の増加を勢いづけた。