本当に理解に苦しむと思ったこと

――優秀な社員を抱えながら、利益至上主義に突き進んだことで歪みが生じ、それが一連の不正を生み出す要因になった?

【磯﨑(拓)】そうですね。同社を擁護するわけではありませんが、もしかしたら前社長や前副社長は、不正まで犯すつもりはなかったのかもしれません。しかし、数字をとことん追求していった結果として、現場が不正行為に手を出すしかなくなるということは十分に考えられます。

例えば、修理部門に過大なノルマを設定していたということ。これはとても危険なことです。修理1件ごとのノルマが決まっていればなおさらです。決められた数字を達成するために、問題のない部品を交換したり修理の必要のない箇所に手を加えたりして修理代金を吊り上げ、過剰請求をするといった行為に走らざるを得なくなるからです。

車のキズやへこみを修復する板金については、昨今はただでさえ粗利が減る傾向にあります。そこに現実的にはあり得ない高額のノルマを課すというのですから、本当に理解に苦しみます。

撮影=プレジデント社
ひたちなかのトップディーラーである磯﨑自動車工業の磯﨑拓紀社長(左)と磯﨑孝会長

ビッグモーター社員は車検を他社に依頼

――修理や車検は不正の隠れ蓑になりやすいということでしょうか。

【磯﨑(拓)】修理工場や車検工場に車を預けてしまうと、そこからはブラックボックスになりますから、怪しいと思っても相手の言いなりにならざるを得ないということでしょう。作業内容を他店と比べるのも難しいですし。まさに儲けようと思えばいくらでも不正ができるのです。

車検にしても、ビッグモーターは他店に比べて基本料金を安く設定していますが、実際に依頼してみると追加作業費や交換部品代などがかさみ、最終的に想定していた金額よりもずっと高額の車検代を請求されることもあるようです。

これは同業の知人から聞いた話ですが、その店ではなんと現役のビッグモーター社員から家族の車の車検を依頼されたことがあるそうです。自分の会社に頼めばとんでもなく高額の車検代を請求されるから、ということのようです。

福利厚生をより充実させようという近年の「働き方改革」に逆行するような話ですね。当社では、社員や社員の家族が車を購入したりメンテナンスに出したりする際には優遇する制度を設けています。車検も格安で受けられるようにしています。