本書に登場する企業にもあてはまりますが、こういったユーザーデータを活用したセグメント機能やチャート機能によってユーザーのモチベーションを高めるのは、中国テック企業の得意とするところです。
このほかにも人気投票、友だちとの個室歌謡ショー、お気に入りユーザーに対する「投げ銭」機能など、チャンバにはコミュニティ機能が充実しており、ユーザー同士が思い思いの交流を楽しんでいます。
ユーザー同士の「ヨコの交流」だけでなく、アプリ内にはプロの歌手や読者モデルのようなインフルエンサーもいるので、彼らとの「タテの交流」を楽しむこともできます。
次第に「みんなでコミュニティを盛り上げていこう」とする気運が生まれ、自ら歌うだけでなく、プロの歌手をめざすユーザーを応援する人、そのコミュニティ内でMCになって仕切る人、DJのようにセレクションする人など「裏方」に回るユーザーもあらわれます。
アーティストへの道を拓く「夢がかなうアプリ」
これらのコミュニティにほかのユーザーも自然に巻き込まれ「友だちの輪」がさらに広がっていきます。実際、このチャンバからプロデビューするユーザーも出てきており、どんな田舎に住んでいてもアーティストへの道が拓けるとあって、チャンバは「夢がかなうアプリ」として若者たちの新しい文化をつくりました。
また、どの曲をどのユーザーがどれくらい聞いているか、または、どの曲のどの部分がうまく歌えていないか等のデータを音楽レーベルに提供して、ミュージックシーン自体を変えていったり、その曲を好むユーザーにプロモーションをすることで、大きな利益を手にし、ユーザーの応援とビジネスをうまく融合しています。
チャンバの開発によって、北京小唱科技は「カラオケボックスを運営する企業」から「ユーザーの自己実現を応援する企業」へと、文字どおりトランスフォーム(変革)しました。
自社の変革だけでなく、中国に「ひとりカラオケを『みんな』で楽しむ」という新たなカルチャーを定着させたという意味で、社会をも変革したといえるでしょう。
成功する最先端テック企業の3つの特徴
特徴① 「便利」を超えた「楽しい!」の追求でユーザーデータを獲得
EXの最大の特徴は、ユーザー同士が自由に交流するプラットフォームを提供することで、ユーザー側に「楽しい!」と感じさせるベネフィットをもたらしていることです。チャンバは「カラオケ」を軸にユーザー同士が思い思いのコミュニケーションを楽しみながら、承認欲求を満たしたり、ゲーム感覚で体験を共有したりしています。
言い換えると、これらはユーザーの「自己実現」を応援するプラットフォームでもあります。「歌手としてデビューしたい」「多くのフォロワーを獲得したい」という自己実現の追求がコミュニティを大きくし、「ヒト消費」を加速させています。