楽しいから自然にユーザーが集まって投稿や買い物をし、多くのユーザーデータが日々蓄積されます。そのデータをAIが解析し、アジャイルでサービスを改善していくことで、さらにユーザーが増え、大きなコミュニティになり、ひとつのマーケットを形成していきます。これが、DXを超えた「EX」と私が呼ぶ理由です。

ユーザーと企業がウィンウィンの関係になっている

ところで、こういったユーザーデータ活用の話題になると、日本ではまだ慎重な見方をする人が少なくありません。「中国だから喜んでユーザーデータを提供するのではないですか?」という人もいます。

日本と中国の文化や国家規制の違いはあると思いますが、中国でも特に若年層は日本と同様、データをとられることに慎重な姿勢を見せます。

それでもこれらの企業がユーザーデータを獲得できているのは、それに見合うだけのベネフィットをユーザーに提示できているからです。データを提供することで、より気持ちのよいユーザー環境が実現することを知っているから、納得してデータの提供に応じるのです。

この「データ提供の対価としてのベネフィットを提示する」ことは、ユーザーデータ獲得における重要なポイントです。

ここでおさえておきたい大事な点は、ユーザーはいつでもそのデータの提供を停止、再開できるということです。

データを停止すれば、当然ユーザーにとってのベネフィットもなくなります。しかし、その選択肢を企業は制限せず、ユーザーが自ら選択できることが大事です。つまり、お互いがフェアな状態が必要なのです。

企業が表に出ることはほとんどない

特徴② 企業は「ユーザーの遊び場」の管理人

EXを実現しているケースでは、企業自体が表に出ることはほとんどありません。それぞれのプラットフォームの「管理人」的な立場で、ユーザーに最大限遊んでもらうための環境づくりに徹しています。サービスを開始した当初は一生懸命商品やサービスを販売していたのですが、気づいたらユーザーを応援したり、褒めることしかやっていない、という企業が多いのです。

チャンバでは、お気に入りのユーザーを応援する動きや、ユーザーの中からMCやDJ役があらわれるなど、ユーザー側が勝手にコミュニティを盛り上げてくれます。企業側はさまざまな種類のランキングでユーザーをやる気にさせたり、「投げ銭」機能で応援する仕組みをつくったりするなど、ユーザーに楽しんでもらう「裏方」に完全に徹しています。

企業側はこれらの仕組みをつくるだけで、あとはインフルエンサーが勝手にそれぞれのコミュニティを運営してくれます。プラットフォームを運営する企業側が過剰に干渉せず、ユーザーを応援したり、褒める側に徹することで、ユーザー自身もやる気になり、さらに投稿などのアクションを増やしていきます。

このように、ユーザーに自由に楽しんでもらうことで、「ユーザーの自己実現」と「企業の成長」の2つのループがブーストされます。その結果、どんどんユーザーデータが蓄積されていくのです。