契約書を交わし、他党と会派を組んだのだが…
すでにお話ししたように、僕はビジネスで人に裏切られる経験をしてきましたけれど、政治の世界でもずいぶんひどい裏切りに遭いました。
国会の活動の単位として、「会派」というものがあるのをご存じでしょうか。小さな政党や無所属の議員たちが自分たちの掲げる政策を通すために、会派を組んでより大きな組織を作るわけですが、「日本を元気にする会」の代表時代、当時の維新の会(現・日本維新の会とは異なる)から「一緒に会派を組まないか」と持ち掛けられたことがありました。
「日本を元気にする会」は小さな政党でしたから、「じゃあ一緒にやろう」となったわけですが、もともと僕の中には、政治家は嘘をつく存在だという認識がありました。そこで、「契約書を作りましょう」と提案して、実際に会派としての約束事を5、6枚の契約書にまとめて、きちんと締結までしたのです。契約書にのっとって、維新の会の代表と私がその会派の共同代表に就任することになりました。
ところが、これは後々わかったことなのですが、彼らの本当の狙いは予算委員会の席を確保することにあったのです。予算委員会は、総理大臣が必ず出席をし、国民から最も注目される、いわば政治家にとってのハレの舞台です。私たちはもとも予算委員会に2席持っていたのですが、それがゼロだった維新の会の人たちにとっては喉から手が出るほど欲しいものだったのでしょう。
「こんなもの何の意味もない」と契約書を破られた
会派を組んで、契約書を交わして、「今回の予算委員会の席に誰が座るか」の取り決めもきちんと行ったのですが、なんと契約書の締結から2週間もたたないうちに、彼らは私たちと真逆の政策を口にし始めまたのです。これはいったいどうしたことかと、維新の会に抗議をしました。
「契約書がありますよね」
と僕が切り出すと、維新の代表は、
「こんなもの何の意味もない」
と言って、僕の目の前で契約書を、ビリビリと破いてしまったのです。
契約書を破られたのもショックでしたが、さらにショックだったのは、その直後、維新の会が勝手に参議院事務局に行って予算委員会の席をぶんどった挙句、会派を解消してしまったことです。あわてて参議院の事務局に状況説明に行きましたが、「あちらの代表が言っているから」のひと言で、この件は終了となってしまいました。国会の仕組みもどうかと思いますが……。
裏切りどころか、彼らは自分たちにとっておいしいところだけを奪い取っていく、盗人みたいなことをしたのです。そして、ビジネスの世界では「絶対の存在」である契約書が、政治の世界ではまったく何の意味も持たない、紙屑同然のものだったのです。
政治とビジネスの世界は仕組みも常識も違うことを思い知らされた、まさに痛恨の出来事でした。