退職金を全額、東京電力株の購入に充てたが…
これは人伝に聞いた話ですが、某大企業を定年退職された方が、老後、安定した配当を得たいと考えて、退職金を全額、東京電力株の購入に充てたそうです。当時、電力株は「資産株」などといわれ、株価が大きく下がることなく、同時に安定した配当が得られたからです。
当時としては、その判断は決して間違っていなかったと思います。ただ、一番の問題は東京電力株のみに資金を集中させたことでした。それから間もなく、2011年3月11日の東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故があり、東京電力の株価は大暴落してしまいました。
同社の株価を見ると、2011年3月10日時点の高値が2163円で、東日本大震災後の安値は、2012年7月18日の120円です。何と18分の1にまで値下がりしたのです。仮に2000万円で同社の株式を買っていたとしたら、110万円程度まで資産価値が目減りしたことになります。
「長期・積立・分散」をベースにしたほうがいい
最近でこそ、若干、株価が戻りつつありますが、それでも2023年4月7日時点の株価は486円です。12年が経過してこれしか戻っていないのですから、買値に戻るには、あと何年、あるいは何十年かかるか分かったものではありません。残念な話ですが、これは老後の資産運用で大失敗した事例といっていいでしょう。
こうなってはいけないのです。だからこそ、最初の段階でこのような大失敗をしないように、「長期・積立・分散」をベースにした投資を心がける必要があるのです。「急がば回れ」という言葉の通りで、短期間で大きく増やそうなどと考えると、失敗する可能性が高いでしょう。
50歳からの資産形成は、やり直しのチャンスが少ないことをしっかり理解して、大きく値崩れしないような投資先を選ぶようにしてください。