中国資本による「リゾート」開発計画

中国とアイスランドの関係は、紆余曲折うよきょくせつありながら深化、と言えるのでしょうか、いろいろな話がありました。

2011年には、中国の不動産企業が約300平方kmの土地を買収して、リゾートを建設する計画がありました。兵庫県・淡路島の半分ほどに相当する広大な土地をリゾートにするというものでした。所有者は売却を承諾したものの、政治的/軍事的な意図があるのではとの懸念が示され、アイスランド政府が許諾を審査する事態となりました。国の独立性を守るためにも土地売買の制限が必要と判断され、前例のない大規模売却は不認可となりました(「中国資本の旺盛な土地買収は極北にまで…観光ブームに沸くアイスランドで高まる懸念」、産経新聞2017年11月19日)。

苦境に陥ったアイスランドに中国が手を差し伸べた

アイスランドを中国へと近づけたのは、2008年の金融危機でした。為替レートの急落や失業率の急上昇によって、アイスランドは、国際通貨基金(IMF)と欧州連合(EU)に救援を求めざるを得なくなったものの十分な支援が得られず、新たな経済協力パートナーを探し始めたのです。

石原敬浩『北極海 世界争奪戦が始まった』(PHP新書)

中国はこれに意欲を示し、2010年にはアイスランドと通貨スワップ協定、2013年には自由貿易協定(FTA)を締結します。ちなみに、これは中国と欧州国家との初のFTAとなりました。

中国の報道では「13億7000万の人口を抱えて急速に発展するアジアの大国と人口33万の北極の島国とは現在、関係を急速に発展させている」「アイスランド北部の湾に深海港を建造し、アイスランドを北海航路(ママ)の主要な海運センターとするなど、野心に富んだ計画を交渉している」等々、中国の北極海進出の大きな足掛かりとしようとする姿が見えます(「中国、アイスランドにオーロラ観測所を建造」中国網日本語版2016年11月27日)。