マイナンバーカードの枚挙にいとまのない課題
マイナンバーカードを巡っては、冒頭に挙げた6月12日の首相の答弁までに、以下に述べるように、すでに継続して多様な問題点が指摘されてきている。
① 頻発する問題
第一に、公金受取口座に家族名義の口座を登録していたという事例が約13万件も起こっていること、第二に、マイナ保険証に他人の情報をひも付けており、その情報の表示が可能となっている事例が公表されているだけで7312件、第三に、別人の口座を誤ってマイナカードに登録した事例が734件、第四に、マイナポイントの口座を他人にひも付けており、他人に付与した事例が173件、第五に、コンビニにおける証明書発行サービスにおいて住民票等の情報を他人に誤って交付したという事例が4つの自治体において14件、そして第六に、年金記録について別人の情報をひも付けていたという事例が1件という、膨大な数の問題が提起されていた。
マイナ保険証の所有は「実質義務化」へ
② 制度的な問題
こうした大量の数の問題が提起されているにもかかわらず、さらなるひも付けを行い、そして保険証の廃止まで期日通りに行うという方針を示していた。そもそもマイナンバーカードの取得は任意であったはずである。
しかしながら、保険証の廃止というのは、医療機関で受診できないか、受診してもマイナンバーカードを所有していなければ10割負担となる可能性が指摘されており「実質的義務化」につながるものであるという見方もできる。
もちろん、岸田政権は、マイナンバーカードを取得していない方でも保険診療が受けられないわけではない、資格確認書を発行するので受けることができる、ということを強調するが、実際にはその資格確認書も有効期間が1年で更新が必要とされ、さらにこの確認書によって受診する患者の窓口負担は、マイナ保険証よりも高くなるという「実質的な罰則や制裁(サンクション)」が与えられることとなっている。「任意取得のマイナンバーカードを取得しないことでサンクションを与えられる」という制度設計の在り方はどうなのだろうか。