マイナンバーカードに関するトラブルをめぐり、政府への批判が強まっている。神戸学院大学の鈴木洋仁准教授は「かつて個人情報が知られるのは、あくまで近所に住む顔の見える範囲に限られていた。マイナカードが嫌われるのは、どこの誰が、自分の情報を知っているのか、あるいは知らないのかを把握できないからだろう」という――。
「マイナポイント」第2弾をPRする金子恭之総務相(左)と広報キャラクター「マイナちゃん」=2022年6月30日、東京・霞が関の同省
写真=時事通信フォト
「マイナポイント」第2弾をPRする金子恭之総務相(左)と広報キャラクター「マイナちゃん」=2022年6月30日、東京・霞が関の同省

マイナカード問題をめぐる世論の反発

マイナカードをめぐる問題は、岸田内閣の支持率を急落させた。

単なる事務手続きのミスであると、高をくくっていた政府にとって、この問題に対する世論の反発は想定外だろう。

2007年に沸騰した「消えた年金問題」を彷彿とさせるが、いったい、なぜ、世論はこの問題にここまで反発するのだろうか。

ここまで広まった理由は「マイナポイント」

そもそも、「マイナカード」の「マイナ」とは何か。

「マイナンバー」を略したものだが、英語としてはもちろん、日本語としても、一度聞いただけでは耳に残らない。

それなのに、ここまで広まったのは、ひとり最大2万円分の「マイナポイント」がもらえるからだろう。

おそらく世界最大のポイント大国である日本でも、ここまで大盤振る舞いな「ポイント」は空前絶後と言ってよい。足元を見られた、とか、お金に目がくらんだ、と言われても、背に腹は代えられない。

かくいう私もまた、いそいそと家族3人分のポイントを申請し、公金受取口座は、3人とも別々にした。

確定申告をはじめ、マイナカードは便利だと感じる上、健康保険証としての利用も、これまでの紙ベースに比べれば、はるかにマシではないかと思う。そんな私でも、「マイナカード」という略し方は、しっくりこない。

「マイナカード」を英語で言うとどうなるのか…

たとえば、「あなたのマイナンバーカード」を英語で言うと、どうなるのか? 「Your My Number Card」となるのだろうか?

総務省のサイトでは、日本以外の国籍の方むけに「Individual Number Card」と紹介している(*1)

直訳すれば「個人番号カード」である。「マイナ」の音感がかもし出す、「まいど」と似た気楽なニュアンスはない。いかにも行政のことばらしく、「個人」を見分けるため、という目的に沿って、冷たいというか淡々としている。

日本語のほうを「マイナンバーカード」という、いかにも和製英語っぽい造語ではなく、英語と同じく「個人番号カード」にしていれば、「マイナ」のような間抜けな語感は必要なかったにちがいない。

なぜ、わざわざ「マイナンバー」を使ったのだろうか?

そこには、50年以上におよぶ歴史がある。