根本原因は「現場」ではなく「制度設計」

こうしてみていくならば、このマイナンバーカードを巡る問題と混乱の原因は、「現場の対応」ではなく、あまりにも性急に、マイナンバーカードの普及を進める「岸田政権の制度設計」にあるのではないだろうか。本来であれば、非常に重要な個人情報の集約という、個々の国民一人ひとりに関わる問題の取り扱いを軽く考えているところにあるといえる。

個人情報の開示、取り扱いについては、政府は慎重であるべきである。にもかかわらず、既に政府が決定しているので、その実施に当たっては「タイムスケジュールありき」で強引に進めていき、問題が起こり多くの国民が不安や懸念を感じたとしてもその見直しを行わずに「タイムスケジュールありき」のまま、国民の不安を払拭できていない状態で、保険証の廃止へと突き進む。そうした在り方には国民の批判が集まっている。

支持率低迷、政権の在り方を揺るがしかねない

G7広島サミットで向上した岸田内閣の支持率は、このところ陰りを見せて、減少に転じており、不支持の方が支持を上回る結果となっている。この原因は、首相公邸における写真撮影などの不適切な行為を行った岸田首相のご長男の問題や、東京28区を巡り、東京における選挙協力が白紙となってしまった、連立政権のパートナーである公明党との関係の悪化だけではない。

国民全員に関わる個人情報の取り扱いを巡るマイナンバーカードへの不安に寄り添わない岸田政権の在り方が非難を浴びている。

そして、このマイナンバーカードについての問題は、その後も連日のように報道が続いており、政権の在り方を揺るがしかねない問題となりつつある。そうした中で岸田首相は、6月21日に保険証の廃止について「国民の不安を払拭する措置の完了が大前提だ」という認識を示した。