マイナンバーカードをめぐるトラブルが相次いでいる。法政大学大学院の白鳥浩教授は「問題の原因は、現場の対応ではなく、あまりにも性急にマイナンバーカードの普及を進める岸田政権の制度設計にある。まずは国民の不安を解消することに全力を尽くすべきだ」という――。
首相官邸を歩く岸田文雄首相(手前)=2023年7月3日、東京・永田町
写真=時事通信フォト
首相官邸を歩く岸田文雄首相(手前)=2023年7月3日、東京・永田町

岸田政権は国民の声を聞いているのか?

「来年秋の(保険証の)廃止に向けて取り組んでいきたい」と岸田首相はマイナンバーカードを巡る問題が後を絶たない中で、2023年6月12日の国会における答弁を行った。

岸田首相は民意をどう捉えているのだろうか?

民意を尊重し、本当に国民の「人の話を聞く」首相なのか、それとも自らの業績づくりにいそしんで、その当事者である国民の「人の話を聞かない」首相なのか。それが再びマイナンバーカードを巡る問題で試されている。

政府が推し進め、この答弁の2週間ほど前の6月2日に成立させた改正マイナンバー法は、保険証の廃止や、マイナンバーの活用拡大を容認する内容となっている。共同通信の5月27、28日の全国電話世論調査によると、トラブルが相次いでいるマイナンバーの活用拡大に対して、不安を感じているとする回答が7割を超えている。

個人情報の在り方に不安を感じる国民

この国民の不安の背景には、マイナンバーに関するトラブルが相次いでいることがある。公金受取口座に家族で同じ口座を登録していた事例があったことや、マイナ保険証に他人の情報をひも付けているという誤登録のことなどもあり、国民の自らの個人情報の在り方について懸念の声が上がっていることが背景にある。

こうした問題があるにもかかわらず、現在の健康保険証の廃止を推し進める政府の姿勢に大きな違和感を国民は覚えているところがある。実に、国民の過半数が健康保険証の廃止に対して反対という調査結果もある。

こうした国民の声をよそに、岸田政権はその政策を進めている。これはどうしたことだろうか?

そもそも民主主義とは、国民の負託をうけて政府が政策を実践するというものである。国民の大多数が反対をしているにもかかわらず、政府が説明も不十分なまま、法的には任意で取得するべきマイナンバーカードを取得しない場合には、保険証の廃止に伴う不利益を被るという、実質的な制裁を科すという形でなかば「強制的」といっても良い形で、強引にその普及を図ってきている。それは国民の「話を聞く」政権の姿とは言うことはできないのではないだろうか。

以下においては、そもそも、マイナンバーカードの問題点とは何か。それを検証しよう。