ヒラリー・クリントンを「何も努力してない」と批判

さらに背景には、そもそもトランプとヒラリー・クリントンが争った大統領選における発言をめぐって、イヴァンカが大きな批判を受けていたという文脈があります。

内田舞『ソーシャルジャスティス』(文藝春秋)

イヴァンカが父ドナルドの応援演説で、「アメリカが誰でも有給の育休を保障される国になるために」などと発言したにもかかわらず、彼女がCEOを務めた洋服ブランド、「イヴァンカ・トランプ」では、従業員たちの産休も育休も保障されていなかったことが指摘されたのです。

選挙運動中のインタビューにおいても、有給の産休・育休の保障や女性の賃金上昇を訴える言葉を並べては「ヒラリーはこのために何も努力してない」と対抗馬のヒラリーを批判したイヴァンカ。

対するインタビュアーが、ヒラリーは職場での女性の地位向上のための具体策を1年前より提示していて、しかも30年前から各分野で女性をサポートする政策を実現していることを指摘したうえで、「あなたが言うヒラリーが何も努力してないというのはどの点についてですか?」と聞き返すと、イヴァンカは「ネガティブなトーンのインタビューには答えられない」とさっさとインタビューを切り上げてしまいました。

ポーズとして批判するだけで、中身はまったくない

アメリカ国内だけでなく世界の勢趨すうせいにも大きな影響を与える米国大統領選において、具体的な政策の中身や対抗する候補者の実績に見識を深めるどころか、ただポーズとして相手の候補者を批判するだけの中身のなさと、まるで私生活をめぐるインタビューに答えるかのような甘い態度と責任感の低さが批判を受けていたのです。

香水“Complicit”の偽CMの中で使われたフレーズ、「フェミニスト、代弁者、“女性の活躍を支持するチャンピオン”と自称しているけど、彼女はどんな女性支援をしてるの?」とは、まさにこのような彼女のフェミニスト気取りの空虚さを指摘したのでした。

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