「共犯的」はイヴァンカを批判する言葉だった

さて、一方の“Complicit”はというと、メリアム・ウェブスター辞典はトランプ前大統領の娘のイヴァンカ・トランプの写真とともに紹介しました。政治的なコメディで知られるバラエティ番組『サタデー・ナイト・ライブ(SNL)』の一コマがこの言葉を広める原動力だった、とメリアム・ウェブスター辞典は記しています。

SNLがハリウッド女優のスカーレット・ヨハンソンがイヴァンカにふんする、香水の偽CMを作って放送しました。

「どんな男性も彼女の名前を知っている。どんな女性も彼女の顔を知っている。彼女が部屋に入るとみんなの視線が注がれる。そう、彼女はイヴァンカ」というナレーションとともに振り返って正面を向くのは、イヴァンカに扮したヨハンソン。

さらに「フェミニスト、代弁者、“女性の活躍を支持するチャンピオン”と自称しているけど、彼女はどんな女性支援をしてるの? アメリカの方向性を変えられるはずなのに、変えない人」というイヴァンカを批判するナレーションとともに、手にした香水が紹介されるのですが、その香水の名前が“Complicit”(共犯的な)でした。

「むしろ女性の社会進出を後退させてしまっている」

イヴァンカ・トランプは政治の経験も知識もないにもかかわらず、トランプ政権の要職をあてがわれ、国際会議などの席については、さも何かを考えているような顔で写真に写るが、実際のところ会議の内容に貢献できるような知識や独自の考察など何も持ちあわせず、ただSNSに載せる絵になる写真を撮るためだけに参加しているようなものだと批判の対象になっていました。

本来、彼女のポジションには能力や経験のある女性が就いて実務的な発言をしてしかるべきなのに、ただのお飾りに過ぎない彼女のような人がメディアに取り上げられることで、むしろ女性の社会進出を後退させてしまっているのではないかと懸念する声が聞かれたのです。

大統領補佐官として、アメリカの女性の地位向上のために貢献するなど、社会の方向性をより良く変えられるポジションに就きながら、その力を行使しない人。娘であり女性蔑視のトランプ大統領に苦言を呈することができる要職に就いていながら、逆らわずに悪い流れに乗る「共犯者」という意味で、彼女の立場を表す言葉として“Complicit”が使われたのです。