ネガティブで生真面目な人ほど腸の悩みも抱えやすい

こうした違いがある以上、当然、ストレスへの耐性も人によって違ってくる。楽観的で打たれ強く、ある意味“鈍感”でストレスをストレスと感じないような人もいれば、繊細で生真面目で、打たれ弱くストレスを抱え込みやすい人もいる。

ストレスが腸の不調を引き起こす要因のひとつであるならば、後者の性格や思考傾向のタイプのほうが、脳腸相関の反応がセンシティブでIBSなどの機能性消化管障害にかかりやすいという側面がある。

こう書くと「そんなに簡単に性格は変えられない」「それができたら苦労しない」という声も出てくるかもしれない。当然だと思う。私自身、そんなお説教をされたくはない。

性格や思考傾向を短期間に完全に変えることは難しい。だが「極端な考え方」をコントロールすることはできる。「自分はこういう性格で、こう考えがち」だと自覚し、「こういうときはこう考えよう」と自分の思考(認知)をできるだけ自分でコントロールできるように努める。それだけでもストレスとの向き合い方は違ってくるものだ。

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「思考のクセ」を変える3つの方法

IBSの患者には、手抜きやミスを許さない「完璧主義」や、白黒はっきりしないと気が済まない「0・100(ゼロヒャク)思考(二極化思考)」といった思考傾向を持つ人が多いことが報告されている。

私にも少々こういう傾向があるのだが、真面目ゆえに少々融通が利かず、自分にも厳しいがゆえに100パーセント思い通りにいかないと落胆度合いも大きく、それが強いストレスとなって自分の腸を苦しめてしまうのだ。

やっかいなのは、多くの場合、自分の思考傾向を理解できているようで理解できていない、自覚しているようで自覚できていないことだ。そのため、ストレスがかかる状況に直面すると無意識のうちに、自動的にそうした思考をしてしまう。

何でもネガティブにとらえる思考傾向がある人は、とるに足らないような些細なミスでも自動的に「もう全部ダメだ」と考えてしまう。ひとつの薬が効かないと、まだ他の薬の選択肢はたくさんあるのに「もう一生ダメだ」と思ってしまう。こういう頭にパッと浮かぶ極端な思考(自動思考)を発端として、ネガティブな「感情」が生まれ、それが腸を不調にする。

本の中で説明した「感情日記」には、「こういうときにイライラする」「いつもこう考えがち」といった自分の思考(認知)や感情の傾向も見えてくるというメリットがある。見えてきた極端な思考のクセや傾向(自動思考)をとらえ、日常生活のなかで少しずつでも意識して修正していくことで、バランスのよい思考ができるようになり、ストレスを感じる脳の部位の異常興奮が収まり、結果的に腸の不調改善につながる(認知行動療法)ことがさまざまな論文で報告されている。

自分を上から見下ろすイメージを持つ

ここでは「いつもの思考のクセに陥りそう」「いつものように感じてしまいそう」な状況に直面したとき、その場で自分を客観視するためのテクニックをいくつか紹介する。

(1)自分自身を上方から見下ろす

ストレスに直面したときに「自分の意識を天井や上空に置き、そこから自分を見下ろす」イメージを持つ。つまり「今の自分を客観的に俯瞰ふかんして見る」のだ。幽体離脱したもうひとりの自分の目線で自分を見て、「おい、オレ。そんなにイライラするなよ」「そんなふうに考えなくてもいいじゃないか」と話しかけている状況をイメージする。これだけでも、自動的に発生する思考のクセや傾向に意識的にストップをかけるきっかけになる。