仕事のデキる人が昇進してから不調になったわけ

先の途中下車症候群だけでなく、「出張先や旅行先などで慣れない場所に行くと、いつもおなかの具合も悪くなる」「大事な仕事を任されると毎日のように下痢に悩まされる」「知らない人や苦手な人と一緒だとおなかが痛くなる」――。ストレスや緊張が腸に不調をもたらしてしまうシチュエーションはさまざまだ。

例えば、人事異動があり、新しい職場やポスト、仕事内容や人間関係に適応できず、ストレスやプレッシャーを感じておなかの調子を崩してしまったというビジネスパーソンが増えている。

実際に、昇進して管理職になったことがきっかけでIBSの症状が出始めたという人がいる。仕事がデキて売り上げもトップクラスの優秀な営業マンだったその人は、大抜擢されてマネジメント職に昇進したが、本人は現場で直接客と接する仕事が性に合っていて社員を管理する業務は得意ではなかった。

ストレスの原因を解決したらIBSの症状も解消した

慣れない仕事を任されたうえに責任も大きく、中間管理職として上と下の板挟みになることもしばしば。さらに部下の指導や育成、評価もしなければならない――。そんな日々を過ごすうち、あっという間に下痢や腹痛、おなかの張りに悩まされるようになり、診察を受けたところ、典型的なIBSと診断された。出世したのはいいけれど、ストレスに押しつぶされて腸を壊してしまったのだ。

この患者さんの場合は、私から診断書を書いて会社に事情を話して再び営業職に戻してもらったことでおなかの調子は快方に向かい、IBSの症状も解消していきいきと元気を取り戻すことができた。

ストレスが原因で腸が不調になり、ストレスが解消されたら腸の調子も回復する。まさに脳腸相関のわかりやすい例だ。