無理やりにでも「まぁいいか」と考えてみる

(2)心に細かい目盛りを作る

とくに勝ち負けにこだわり生真面目な完璧主義の人は、前述した「0・100思考」に陥りやすい。100かゼロか、黒か白か、勝つか負けるか、といった具合である。100点満点だけを求めて自分を追い込みそうになったときに、無理やりにでも「少々できなくても、まあいいか」「70点ぐらいでも上出来じゃないか」と考えるようにする。自分で自分の心の中にもっと細かい目盛りを作ろう、ということだ。

つまり、0点と100点の間には、たくさんの目盛りがあるのである。「100パーセント失敗した」と思ったことでもよくふり返ってみると、20パーセントくらいはうまくいったこともあるはず。人生は「勝ち負け」だけで測れるものではない。ましてや、ときには「負けるが勝ち」なこともあるくらいだ。

(3)立場を置き換えてみる

3つめは(1)に近い考え方だが、ストレスを感じている自分をほかの誰かと置き換えて考えてみるという方法だ。例えば自分がひどく落ち込んでいるとき、「もしそう落ち込んでいるのが○○だったら、自分はどんな言葉をかけてあげるだろうか」と考えてみるのだ。

置き換える相手は親しい友達や先輩、家族などがいい。大切な人のストレスを緩和してあげるために、自分ならどういう言葉をかけてあげるかを親身になって考えてみる。それが、「今、ストレスを感じている自分」と客観的に向き合い、陥りがちな極端な自動思考に気づく糸口になる。こうした方法を試みることで、少しずつ自動思考の落とし穴を回避できるようになり、かけがえのない、自分の腸にやさしい自分になることができる。

おなかの不調には複数の要因が存在することが多い

以上、これまで過敏性腸症候群の原因のひとつ、ストレスに起因する「脳腸相関のバグ」について解説してきた。

江田証『超一流の腸活術 最高のパフォーマンスを生み出すための食事法と習慣』(KADOKAWA)
江田証『超一流の腸活術 最高のパフォーマンスを生み出すための食事法と習慣』(KADOKAWA)

ただし、おなかの不調の原因はひとつだけではなく、複数の要因が存在することが多い。おなかの不調の原因は、「全部がストレス」ではないのだ。「先生、どうしてストレスのない会社が休みの土日にも腹痛や下痢が出るんですか?」と患者からよく聞かれる質問が存在するのがその証拠である。

例えば、おなかの不調は、ストレス以外にも、「FODMAP(フォドマップ)」という糖質に対して耐性がなかったり、「小腸内細菌異常増殖症(SIBO/シーボ)が存在していたり(過敏性腸症候群の3分の2には小腸内の細菌が増えすぎていることがわかっている)、胆汁の分泌・吸吸障害や腸管アレルギーが関与していることもある(『超一流の腸活術』参照)。これらをひとつひとつ吟味し、改善することで、今までひとりで泣きながら戦ってきた孤独でつらい闘いが終結し、あなたが、常に腸のことを意識せざるをえない毎日から解放され、あなたの人生があたり前の幸福を取り戻すことを祈っている。

※参照文献:Natsui K, et al. “Escherichia coli-derived outer-membrane vesicles induce immune activation and progression of cirrhosis in mice and humans.” Liver International (2023).

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