精神疾患の症状も改善する
もしあなたが世界中で何らかの精神疾患を患う4億5000万人のひとりだったら、食事にオメガ3系脂肪酸をもっと加えれば同じ恩恵が得られるのだろうか?
この問いに答えるべく、メルボルン大学の研究チームが、精神病性障害の病歴のある10代と20代前半の被験者に魚油を与えた(魚油なら精神病治療薬を使う場合と違って偏見を持たれないため、患者にも受け入れやすい)。
この臨床試験の被験者は、それぞれ700ミリグラムのEPAと、480ミリグラムのDHAを毎日与えられた。3カ月後、魚油を摂取したグループは、プラセボ群に比べて精神疾患の症状が出ることが大幅に減っていた。
だが、もっと驚くべき発見があった。
この7年後に医師が被験者を診察すると、プラセボ群の40パーセントは完全な精神疾患に移行していたが、魚油を摂取した被験者のうち精神疾患に移行していたのは10パーセントだけだった(つまりリスクが4分の1減った)。その上、脳機能がかなり改善し、疾患の症状を抑えるための薬の量も減っていた(それ以前は、精神疾患を抱える成人がオメガ3系脂肪酸を摂取した場合、結果はまちまちだった。だが、この研究は治療が早いほど効果も高くなる可能性を示している)。
では、魚油はメンタルヘルスの万能薬なのだろうか? 残念ながら、答えはノーだ。それでもこの研究は、はっきりとしたエビデンスを提供してくれている。
つまり現代人の食生活は、脳が必要とする栄養とかみ合っておらず、そのアンバランスを正せば、かなりの恩恵が得られると思われる。