化石燃料から「グリーンエネルギー」へ

広島サミットでは、岸田首相が「GX(グリーン・トランスフォーメーション)の実現」を宣言する予定となっている。つまりは平たくいうと、温暖化ガス(温室効果ガス)を発生させるこれまでの化石燃料中心のエネルギーから、太陽光発電や風力発電など、グリーンエネルギーが中心となる、エネルギーの大転換を積極的に行い、経済社会システム全体を変革し、温暖化ガスの排出を削減する取り組みを指す。

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経産省によれば、単に脱炭素社会を目指すということではなく、脱炭素を進めることによって日本の「産業競争力」をアップして、新しい技術力を創出し、同時に、関連する新産業を国内で育み、海外にも勝てる日本の強みにしていくということらしい。

本当にそんなに簡単に一石二鳥が、実現できるのだろうか。人を疑うことをなりわいとする記者という仕事をしてきた私は、そんなおいしい話は、絶対に簡単ではないと肌感覚で思う。

議長国というのは、議題をまとめ上げて、先進国各国が、とりあえず「今回は、これをやることにしましたよ。世界の皆さんよろしくお願いします」という旗をしっかり見えるところに立てる仕事をしなければならない。例えそれが、ポーズだけだったとしても先進国の一員だから、その責任から逃げるわけにはいかない。

石炭火力発電の廃止時期は明示せず

ロシアのウクライナ侵攻に端を発する、天然ガスや原油といった化石エネルギーの世界的な高騰と不安定な世界情勢。それを踏まえて気候・エネルギー問題は、広島サミットの主要議題の一つになることは間違いない。

札幌でのG7環境大臣会合では、西村康稔経産大臣が「共同声明には、各国のエネルギー事情、産業・社会構造、および地理的条件に応じた多様な道筋を認識するという日本の希望が、しっかり明記された」と強調した。

つまり、温暖化ガスを多く排出する石炭火力発電の依存度の高いアジアの状況(もちろん日本も)を考慮しつつ、石炭火力発電の廃止時期の明示を見送った。欧州の国々が求めてきた要求をここは頑張って突っぱねた格好となった。

また、日本が先端的な技術を持つ石炭火力のアンモニア混焼を積極的に行っていけば、今は完全に“悪者扱い”の石炭火力発電の有効性をも世界にアピールできるかもしれないという思惑もある。